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バネ鋼

カトマンズの遊園地

2024年11月1日

  首都カトマンズの中心部のやや南側にカトマンズ・ファン・パークという遊園地があります。無料の公園とは違って有料なので、子供だけでホイホイ遊びに来れる所ではありません。子供にとってここは土曜日や祝祭日に大人に連れて行ってもらう一大レジャー施設なのです。ちなみにネパールでは日曜は普通に学校があります。
 
  遊園地の入り口はこんな感じです。おいおい版権は大丈夫かと言いたくなります。まあ多分ダメなのでしょう。しかしこれくらいはまだまだ序の口、中に入るとワンダーランドが広がっております。

ファンパーク

ファンパーク

  入り口の直後に入場券の販売所と入場ゲートがあります。入場料は大人は60円、子供と学生は30円です。ネパールと日本の物価差がザックリ5倍あるとしても、これはお安いと言えるでしょう。でもあくまで入場料であって、アトラクションの費用は別途かかるシステムです。

ファンパーク

  ゲートの上部にはデ●ズ●ーアニメのキャラ達が並んでお出迎えです。両端のマヨネーズみたいなものはこの遊園地のオリジナルキャラのようで、園内で散見されます。
  更にゲートを入って右手には、店長が今まで各国で見てきた中でも屈指の造形のピ●チ●ウが呆然と立ち尽くしていました。

ファンパーク

  奥に進むとありました、遊園地の定番のお化け屋敷です。字体がイイですね!上側の英語表記が「ハウス・オブ・ホラー」なのに対して下側の「BHOOT GHAR」とはネパール語でブート・ガル即ち「悪鬼の館」くらいの意味になります。

ファンパーク

  ネパール人が一体どんなものに恐怖を感じているのか非常に興味があるところなのですが、店長はビビリなので中に入れませんでした、すみません。でもその代わり別の怖いものを発見しました。
 正体不明ながら、これもこの遊園地のオリジナルキャラなのでしょうか。もし店長が子供の時に遭遇していたらきっと泣いていたに違いありません。それくらい不気味なのになぜかネパールの子供達には大人気です。



   どこかで見たような気がするキャラ達も園内にあふれています。超人ハ●ク、バ●ト●ン、ウ●ト●マ●さえもおります。でもやはり上記のオリジナルキャラが人気ナンバーワンでした。

ファンパーク

ファンパーク

ファンパーク

  別途料金が必要なアトラクションとしては、小規模なジェットコースターやブランコのように揺れる海賊船、そして観覧車なんかがもあります。特に観覧車は恐らく国内で最大のもので、外のバス通りからも見えるこの遊園地の看板的な存在と言えましょう。



   ただこの観覧車、回転スピードが異常に速い気がします。ふつうは観覧車とはごくゆっくりと回転し、高い所からの眺めを優雅に楽しむためのものであるはずです。ですがどう見てもスキー場のリフトくらいのスピードで回っています。乗り降りの時にどうしているのか不安です。
  不安と言えば、子供用のアトラクションの安全バーがロックされている様子がありません。店長の勘違いであるならばよいのですが…。

  色々とアレですが、子供たちは非常に楽しんでいる様子なのでまあいいのでしょう。ここは常設ですが、お祭りの時期だけ臨時で作られる小さな移動遊園地なんかもあります。またカトマンズ盆地の東端にはウォーターパークも作られました(時々閉園しますが)。

  ネパール内戦が終わって今月で丸18年になります。内戦中は遊園地なんてとても考えられませんでした。平和っていいですね。

鍛冶工房が引っ越しました

2024年10月1日

  2020年からのコロナ期間中にしばらく行けないでいるうちに、当店と契約する鍛冶工房が引っ越ししておりました。前回の引っ越しから8年ほど経ちます。
  不思議な事に引っ越し先は旧住所からほんの100mも離れていない場所で、なぜ引っ越したのかよくわかりません。コロナ期間中に当店向けのククリが出荷できずに仕事が減って、規模を縮小したのかもしれません。
  とりあえず引っ越し祝いに日本のウイスキーを持っていきました。

  お店はまだ仮営業ですがこんな感じ。やはり前よりも若干手狭に感じます。

お引越し

  金床は以前から使っているものです。上端がこんな具合につぶれるまでには5年や10年ではききません。

お引越し

お引越し

  ちょっと奥にはバフ掛け用のモーターの横に、当店に納める予定の白兵戦用大型ククリが仕上げを待っている状態でした。

お引越し

  その下にはこれまた作りかけのカルダとチャクマが無造作に転がっています。

お引越し

お引越し

  日本人の感覚では工房の中はあまりにも雑然としています。ですがその中からあの芸術品とも言える美しいククリが生み出されるなんて、何か魔法のような力を感じます。

  工房長のプルナさんにはパンデミックに負けずに今後も新天地(というほど移動していませんが)で良いククリを作り続けていって欲しいものです。ひいてはそれが当店の繁栄にもつながります。
  コロナ期間中は、ここのようにネパール軍や警察にククリを卸している工房はまだよかった方で、観光客向けのククリを主力にしている工房はまるっきり商売にならずに、農作業用の鋤や鎌を作ってなんとか食いつないでいたそうです。魔法のような腕をもってしてもウイルス相手では如何ともしがたいものがあります。
  観光はヒマラヤの小国であるネパールにとって一大産業ではありますが、パンデミックや世界情勢に大きく左右される商売は怖いですね。


飛び地のヒンドゥー教

2024年9月1日

  店長日記では何度かヒンドゥー教に関する話題を取り上げています。ヒンドゥー教の世界観が非常に魅力的で思わず話したくなることが主な理由ですが、ネパールではヒンドゥー教が生活の隅々にまで浸透しているのでそれを避けていては話ができないことも大きな理由です。という訳で今回もヒンドゥー教のお話です。
 
  世界にはいろいろな宗教があります。2023年の統計によると世界人口に占める信者人口の割合は、キリスト教が約31%、イスラム教が約26%、そしてインド・ネパールなどの南アジアの主要な宗教であるヒンドゥー教は15%と第3位の人口を誇ります。ちなみに4位は仏教で6%です。
  ここで、おやっ?と思われなかったでしょうか? 教科書にも載っている世界三大宗教と言えばキリスト教・イスラム教・仏教です。なぜ仏教徒の2倍以上の信者がいるヒンドゥー教がはずされているのでしょうか?

  ウィキペディアで世界三大宗教を検索すると『地理的、民族的な壁を越えて世界中に広まり社会や文化に大きな影響を与えている宗教』と書いてあります。どうやらヒンドゥー教は12億人の信者を擁するにもかかわらずこの定義に当てはまらないようなのです。
  最初に書いた通り、ヒンドゥー教は南アジア圏の社会や文化に大きな影響を与えていますが、地理的民族的な壁を越えて世界に広まってはいないと見なされている事がその理由です。

  実際、キリスト教とイスラム教はどこの国に行っても多少の差はあれ、まんべんなく教会やモスクを目にすることができます。それに比べると仏教はアジアに偏りがちですが、それでも非常に多くの国で信仰されています。
  一方南アジア以外でヒンドゥー教の寺院を目にすることはめったにありません。特にヨーロッパや南北アメリカ大陸そしてアフリカ大陸では皆無と言っていいかもしれません。これでは地域民族限定宗教と言われても仕方ありません。

  しかしながらヒンドゥー教が地理的民族的な壁を越えて広がった例も僅かにあります。カンボジアやインドネシアやモーリシャス共和国がそうです。
  ただしカンボジアでヒンドゥー教が栄えたのは昔の話です。またインドネシアのヒンドゥー教徒はバリ島に集中しており、国全体としては人口の2%を切っています。島国であるモーリシャスでは人口の約50%がヒンドゥー教徒ですが、それもそのはず住民の大半がインド系の移民で構成されているため、インド人ごとヒンドゥー教が引っ越してきた感があり、地理はともかく民族を超えているかと言われると苦しいです。

  うーむ、やはり世界宗教の仲間入りは難しいですね。それでも店長は南アジア以外の国で初となるヒンドゥー寺院を見るために、上記3か国の中で日本から1番近いカンボジアに行ってみることにしました。
  同じキリスト教でも国によって教会の様式や信仰の仕方に違いがあるように、きっとヒンドゥー教寺院も南アジアの物とは違っているはずで、イヤというほど見てきているネパールの寺院との違いを楽しめるはずだと思ったのです。

  さてやって来ました、カンボジア中部の都市シェムリアップ。その北部に広がるのはかの有名なアンコールワットです。
  現在のカンボジアは仏教国ですが、日本でいうところの鎌倉時代にはヒンドゥー教国であって、アンコール寺院群もその頃にヒンドゥー教の神々のための宮殿として建てられたのだそうです。

  アンコールワットは規模も壮大です。南北1.3km、東西1.5kmの単独のお寺なんて初めて見ました。面積は東京ディズニーランドの4倍弱あります。日光東照宮も比叡山延暦寺もかないません。
 下の写真がアンコールワットです。
 
ヒンドゥー

ヒンドゥー

ヒンドゥー

  一見してネパールのヒンドゥー寺院との差は明らかです。ネパールでは寺院は赤い煉瓦と木で作られているのものが典型的ですが、アンコールワットは主に石材(と一部煉瓦)で作られているようです。下のネパールの寺院と見比べてみてください。

ヒンドゥー

ヒンドゥー

ヒンドゥー

  アンコールワットもかっこいいですが、普段見慣れているせいなのかネパール寺院の方が店長的には渋くて好みです。
  こんなにも壮大な寺院を築き、かつて隆盛を誇ったヒンドゥー教も今や信者の数はカンボジアの全人口の1%にも満たないマイナー宗教となってしまいました。世界宗教への道はかくも厳しいのです。

  しかしそれもいいではありませんか。世界宗教から仲間外れにされても一人我が道を行けば良いのです。ネパール人はそんな些末事を気にする人たちではありません。
  地元の住民が早起きをして薄暗いうちからヒンドゥー寺院の掃除を欠かさず、同じくらい早くから参拝者が絶えないのですから、世界宗教かどうかという事よりもこっちの方がより重要ではないでしょうか。

バネパ(後編)

2024年8月1日


  先月の店長日記ではバネパという街を訪れましたが、今回はその後編になります。
  山に向かって軽い坂を上ること30分、お寺の近くまで来ました。しかしお寺らしい建物が見当たらないのです。スマホ片手に地図を見ながら歩いているので間違いないはずです。近所の人に聞いてもお寺はあると言っています。大きなお寺なら100m先からでもわかるはずなのですが…。
  まさかこれなのか?

バネパ

  そこには何やら4畳半くらいの小さな土台のようなものと、何かを取り外した穴のようなものが残されておりました。
  これは...、お、お寺の跡? 多分グーグルマップが作られたときはちゃんとお寺だったのでしょう。 といいますか、ここまで来る人は珍しいとはいえ、こんな小さなお寺が大きく表示されているマップって問題なのではないでしょうか?

  目的を達成(?)したので遅めの昼ご飯を食べて帰ることにしました。せっかくなのでネワール様式の旧市街を散策するべく来た時とは別の道を通って迷路のような煉瓦の道を歩きました。こういうぶらぶら歩きが店長は大好きです。

バネパ

  上の写真はお日様に背を向けて日向ぼっこしながらおしゃべりと編み物をしているおばちゃん達です。ネパールは緯度が低いため日差しは強く、1月でもこの辺りは最高気温が15、6度まで上がるので風が通らない入り組んだ路地では日当たりのよい場所はポカポカと暖かく、絶好の日向ぼっこスポットです。

バネパ

  路地にはこんなワンダーランドもあります。間口わずか3mのお店にクリスマスツリーの飾りつけかと思うくらい各種スナック類がぶら下がっています。中央のやや傾いた棚の上にはばら売りのキャンディーやグミやガムの大瓶が並び、奥の棚には若干高級そうなパッケージのクッキー類がぎっしり陳列されています。
  子供たちが夢見る最強のお店といった所でしょうか。そこには最近の日本のお店では体験できない種類のワクワク感があります。

  店長が歩き回りながら探していたのは良さげなモモ(桃じゃないです、シュウマイみたいなネパール料理です)のお店です。良さげな店とは即ちモモを蒸す大鍋から常に蒸気が上がっていてお客がたくさん入っている店です。
  見つけました。店の中だけではなく外にもテイクアウトのお客さんが沢山いて、なかなかの人気店のようです。このお店にはメニューなどというものはなく、料理を指差して口頭で注文するスタイルです。注文したのは野菜のモモとミルクティーと乳を煮詰めて作った甘いお菓子です。

バネパ

バネパ

  モモはソースを上からかける店が多いですが、この店では小皿に入ったディップに付けて食べます。このディップが絶品でした。トマトベースにマッシュした豆を加えたとおぼしき味で、他の店でよくあるただのカレー風味のソースではありません。次回また訪れる時のために地図にしっかりマークしておきました。

バネパ

  まあここまで来られる方も少ないとは思いますが、念のため場所は上の写真の青い矢印マークです。バネパまで来てしまえば地図左下のバスパークから徒歩4分、幹線道路でバスを降りたなら徒歩わずか2分といった立地です。
  カトマンズから来られる方はまずはローカルバスの車掌の口上を聞き取るところからチャレンジしてみてください。

バネパ(前編)

2024年7月1日

 
  当店のネパール側事務所がある古都バクタプルから東へバスで1時間の距離にバネパという町があります。ここもバクタプル同様にネパール中部に点在するネワール族の街です。
  ネパールに50以上あるという少数民族のうちでもネワール族は人口が特に多いというほどでもない(上から6番目)のですがかなり栄えており、商売上手なためか交易路沿いに拠点を築き、飛び地のような街を作ってきたのです。
  そこがネワールの街かどうかは見ればすぐに分かります。なぜならそこにはネワール様式と呼ばれる特徴ある木と煉瓦造りの街並みが広がっているからです。
こんな感じの建物です。

バネパ
                      ネワール様式の家並

  バネパは近くにあるドゥリケルやパナウティといったネワールの街とは違い、これといった見どころがないため観光客も素通りする街です。なので店長もいままで行ったことがありませんでした。
  しかしそう遠くない上に幹線道路沿いにあって移動しやすいので、今回初めて行ってみました。目的は特にありませんが、ひとまずグーグルマップに表示されたお寺に行ってみようと思いました。
  結構縮小して見てもマップに表示されているところからすると、大きくて立派なお寺に違いありません。

  さてまずはバクタプルから東に向かうバスに乗ればいいのです。ただし少々慣れが必要です。一部の観光バスを除いてネパールのローカルバスはみんなそうなんですが、バスがバス停に止まったら車掌が素早く降りてきて行き先を叫ぶのです。 
  行き先は一つではないので主要な行き先を続けて連呼することになります。日本人には「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ・・・」としか聞こえない長い口上を聞き取って、自分の目的地(またはその近く)が含まれていればそのバスに乗ってよいことが分かります。
  大きなバスパークでもなければバスはひっきりなしにやって来てはすぐに走り去るので、聞き取りに許された時間は短ければ2,30秒です。なかなかに高いハードルなのです。店長も聞き取れるようになるまでずいぶんかかりました。

  下の動画の車掌(黄色い服の兄ちゃん)が口にしている行き先は「ペプシコーラ、プラノティミ、サノティミ、サラガリ、バクタプル」なのですが、聞き取れますでしょうか?ちなみにペプシコーラも立派な地名です。


バネパ
                                             乗ってしまえばこんな感じ

  バネパに着いても車掌が「バネパに着きました」と教えてくれるわけではありません。車掌はあくまでそこから先の行き先を叫ぶだけなのでスマホの地図でしっかり現在地を確認して降りましょう。

  知らない街に着いたらまずトイレの位置を確認します。これ重要。日本ならちょっとしたお店や公園には必ずトイレが付いているのですが、ネパールではそうはいきません。田舎だとなおさらです。バネパのような大きな街ならバスパークの付近やショッピングモール(あればですが)が狙い目です。
  トイレの位置を確認したら街をぶらぶらしながらお寺に向かいます。町を歩いての第一印象は『まるで20~30年前のバクタプルのようだ』です。時期が悪かったせいなのかもしれませんが観光地化されていないので自分以外の外国人は一人も見かけませんでした。お店も観光客に媚びることなく、英語のメニューなどありはしません。

  極めつけは野犬の多さです。多いだけではなくフレンドリーではありません。こんな所までも昔のバクタプルそっくりです。野犬にとっては外国人など自分のテリトリーに不法侵入して来たただのよそ者でしかありません。久しぶりに吠えたてられました。
  こんな時は石を拾うフリだけでもすれば犬は警戒して距離を取ります。小さいころから住人に吠えては石をぶつけられて育ってきたので自然にそうなったのでしょう。棒を手に持っても同じ効果があります。犬がビビっている間にテリトリー外へ逃げましょう。ただし走ってはいけません。走れば自分より弱い相手とみて追いかけてきます。あくまでゆったり歩いて離れます。

  こんな状態で地元の人は困っていないのでしょうか?どうやら困っているようです。これも久しぶりに見ました。下の写真の人が何なのかお分かりでしょうか?

バネパ

バネパ
            一分の隙も無い野犬狩りのコスチューム

 これは野犬狩りです。長袖に長ズボン、靴は足首まである丈夫な革靴、そして何と言っても大きな網を持っているのですぐに分かります。後ろには毒物を抱えた助手とギャラリーの子供たちが控えています。
 広い場所なら人間がどう頑張っても犬を捕まえるのは至難の業でしょう。走る速さが違いすぎるからです。ですが狭くて入り組んだネワールの町並みなら頭を使った連係プレイで挟み撃ちにしたり行き止まりに追い込んだりできる人間の方に分があります。
 捕まえたら保健所まで連れて行くなどという手間はかけません。その場で毒を打ち込みます。殺すところはあまり子供に見せて欲しくないのですが…。

 あまり近づいて巻き添えを食いたくないので横目で見ながら通り過ぎました。店長の目的はお寺なのです。

後編に続く....

道端の穴

2024年6月1日

  ある日、バクタプルの中心部から3kmほど離れた郊外の道を歩いておりました。この辺は丘陵部の中腹にあたり、住宅も街灯も無いがかろうじて舗装はされているような所です。道の左右には森が広がり、時折鳥の声が聞こえてきます。

穴

  すると何やら道端の斜面に穴が開いているではありませんか。気が付くとここだけではなく道に沿って点々と穴があります。大きさは直径60cm前後でそれほど深くはありません。これはいったい何の穴なのでしょう?

穴


穴

  動物が多い土地柄なので最初はおそらく野犬か狸あたりが掘った穴かと思いました。しかし近づいてよく見ると道具を使って掘った痕跡があります。

穴

穴

  となると掘ったのは人間という事になります。でも何のために掘ったのか?その答えは日本人の想像を遥かに超えたものでした。
『掘り出した赤土と牛の尿を混ぜて自宅の玄関から道路まで敷き詰める』
が答えです。
  穴を掘るのが目的ではありませんでした。赤土が欲しかったのです。赤土に牛の尿を混ぜたかったのです。そしてそれを敷き詰めたかったのです。はたして正解できた読者の方はいらっしゃるでしょうか?

  しかしそうなると次の疑問がわきます。何のためにそんな物を敷き詰めるのか?ここはヒンドゥーの神々が住まうネパールです、そして牛は神聖な動物で赤は寺院に使われる色です、何か神秘的あるいは呪術的な目的があるような気がします。
  しかしその答えも店長の想像を超えていました。
『こうするとよい虫除けになるので玄関から虫が入らなくなる』
が答えです。

  全然神秘的じゃありません、実用目的でした。それにしてもあれだけの数の穴が開いているのです、これは特別な事ではなくごく普通にどこのご家庭でも行われている事だと推察されます。
  ごく日常的な事なのにもかかわらずネパールに通い始めてウン十年の店長の予想ががかすりもしないのですから、まだまだネパールは奥が深いと感じました。

スクテイーとロキシー

2024年5月1日

  店長の好きなお酒のつまみにスクティーがあります。ネパールに出張すると必ず買って帰るのがスクティーです。それに合わせてネパールの地酒であるロキシーも忘れずに持ち帰ります。
  ただスクティーと言えば典型的には干し肉をさす場合が多いと思いますが、もっと広い意味では干物全般を意味します。ですから肉を干せば肉のスクティーとなりキノコを干せばキノコのスクティーになります。店長が好きなのは肉のスクティーです。

  ネパールの首都カトマンズの中心街にアサンチョークがあります。6本の道が複雑に交差して自分がどっちに向かって歩いていたのか分からなくなる観光客泣かせのこの場所に乾物屋がひしめいています。間口が狭い小さな店先に干し肉はもちろん干し魚、トウガラシなどの干したスパイス類、各種の豆、お茶、ナッツ、スナック類など乾きものがぎっしりと並べられているさまは壮観です。
 
スクティー

  典型的にはこんな感じのお店です。たいていの商品は大きな袋に入れてドカッと置かれており、注文するとザックリと掬い取って秤に乗せてくれます。昔はてんびん秤だったのが今は電子秤になっていたことに時代の移り変わりを感じます。
  下の写真が水牛のスクティです。これは炒めたり炙ったりして調理して食べるタイプのスクティで、そのまま食べるタイプだともっと薄切りにした感じのものが小分けにされて袋詰めされて売られています。辛いのと辛くないのがあるので注文するときにはご注意ください。

スクティー

 スクティ屋にはこんなものも一緒に売られています。

スクティー

スクティー

スクティー

スクティー

  一番上の写真の派手な色をした鍋敷きのようなものは、よく分かりませんが多分お祝い事の際に揚げて食べるお菓子の類ではないかと思います。
  その下の写真では隣に羊羹のような板状ものがぶら下がっています。これはチーズを干したものではないかと思います。多分これをサイコロ状に切ったものを山地で食べた事があります。
  3番目の写真は米をパフにしてナッツやポテトチップのかけらを混ぜ込んだスナックですね。
  一番下は色とりどりのマカロニです。店長はこの種のものをネパールで食べたことがないので茹でるのか揚げるのか不明です。

  スクティに話を戻しますと、店長が買うのはもっぱら調理して食べるタイプです。なぜならできたての熱々を食べられるし、味付けも好みに合わせられるからです。
  調理法も色々あるのでしょうが店長の好みではまずギゥとジンブーが必要になります。ギゥ?ジンブー?また分からない言葉が出てきましたね。
  ギゥはインドではギーと呼ばれています。これなら知っている方も多いのではないでしょうか。バターを加熱して水分やタンパク質を除いて常温で保存できるように加工したものです。澄ましバターとも言います。日本でも食材店などを探せば見つかります。
  ジンブーは香辛料の一種です。でも辛くはありません、ニンニクのような香ばしい良い香りがします。見た目はお茶っ葉のようです。店長はこれを日本で見たことがりません。ローカルな香辛料なのでしょう。

  さて食べ方ですが、まずフライパン(鉄製を推奨)にギゥを入れて指先大にちぎったスクティを弱火で炒めます。塩をまぶしつつ焦がさないようにまめにひっくり返します。
  スクティが2/3位に縮んだところでジンブーを一つまみ投入してギゥになじませます。最初にジンブーを入れてしまうと最後には焦げ付いておいしくなくなるのでご注意を。ジンブーの良い香りがギゥに移ったら完成です。お好みで七味唐辛子をかけるとなお良し。

スクティー
                             ジンブー

スクティー
                        小さくちぎったスクティ

スクティ
                      ギゥを入れて炒める

スクティ
                        出来上がり

  トマトと一緒に炒めても美味しいのですが店長は素炒めの方が好みです。これがまた地酒のロキシーに実に合うのです。今夜はこれで一杯やります。

宝石を踏んづけて歩く街

2024年4月1日

  当店のネパール側事務所と鍛冶工房があるバクタプルは首都カトマンズのやや東にあります。バスが調子よく走ればカトマンズからバクタプルまで40分といったところです。
  バクタプルは1,000年以上前から独立した王国として栄えた古い街で、旧市街の主要な道には味気ないアスファルトではなく煉瓦と石畳が敷かれた情緒ある街並みになっています。
  当店の拠点がある街なので当然今までに何十回、いや何百回となくその石畳の上を歩いていたのですが、今回新たな発見がありました。

ガーネット

  上の写真をご覧ください。旧市街の典型的な道路です。通る人々が踏んづけているのは灰色の石畳です。どんな石が使われているのかと言うと、下の写真をご覧ください。ちょうど補修中の道があったのでよく分かりますね。厚さ15cmほどの大きめの枕くらいのサイズの石が使われています。

ガーネット


ガーネット

  この状態ではまだ石の表面はざらついてはいるものの均一な質感のただの石です。ですが長年人や車に踏んづけられてその表面は少しずつ削られていきます。すると、全部の石ではありませんが何枚かに1枚の割合で表面になにやら粒状のものが浮かび上がってくる石があります。

ガーネット

 さらに接写すると、、、

ガーネット

ガーネット

  この粒が残っているという事は周囲の母岩より硬くて摩耗しにくい素材であることが分かります。これは何だと思いますか? これはガーネットなのです。
  ガーネットは宝石の一種で、ひび割れがなく大粒で透明度が高いものが指輪や腕輪の装飾に使われたりします。敷石の表面に浮き出ているガーネットの大きさは、小は胡麻粒大から大はビー玉大まで様々です。水をかけてみると色がよく分かります。

ガーネット

ガーネット

  きれいなルビー色をしています。残念ながら透明度は高くありませんので宝石としての価値は低いようです。でも街中を探せば透明な石も見つかるかもしれません。剥がれ落ちたガーネットがきっと石畳の隙間に落ちているに違いないと思った店長は隙間に棒を差し込んでガリガリやったところ、出ましたよ。

ガーネット

  直径5mmほどのガーネットです。店長がここまでやった段階で近所の人が寄ってきて「兄ちゃん何しとるんや?」と声をかけられてしまいました。まあそうですよね、不審な外国人が石畳に水をかけたり棒を突っ込んだりしているのですから。
  たどたどしいネパール語で説明したところ「ガーネットってなんじゃい?」という事になりました。どうやらガーネットを知らないらしいです。それどころか所々石畳の表面がデコボコしていることなど気にも留めていません。昔からそういうものだ、という感覚らしいです。バクタプルの住民は生まれた時からずーと宝石を踏んづけて暮らしてきたのです。

  この石畳のガーネットですが、宝石としてはともかく実用面で非常に役立っているのではないかと店長は推測しています。即ちガーネットのように硬くて摩耗しにくい粒が表面にびっしりと付いているという事は、強力な滑り止めの効果があるという事です。
  北海道では道路が凍って滑りやすくなると氷の上に粗い砂をまいて滑り止めにします。もしそれが無ければさっぽろ雪まつりの会場で転倒による怪我人が激増することでしょう。
  同様に石畳は滑りやすいので雨の日などは車やバイクがスリップして危険です。ですがこのガーネットのおかげで事故がずいぶん防がれているのではないかと思います。
  ただ住人がガーネットの存在に気づいていない為か、坂道やカーブなどの特に危険なポイントに集中的にガーネット入りの石が使われるという事もなく、偶然に任されています。うーん、惜しいなぁ…。

  古都の道路には意外な秘密が隠されていました。きっとまだまだ沢山の秘密が隠れていて店長に気付かれるのを待っているに違いありません。魅力が尽きないバクタプルなのでした。


おいしいニジマス

2024年3月1日

  店長は魚が好きです。煮て良し、焼いて良し、蒸しても揚げても何をしてもおいしい食材です。でもネパールでは魚がそれほど食べられていません。
  年間の一人当たりの水産物消費量も日本の10分の1です。昔はさらに少なく、統計によると1982年時点で比べると一人当たりの消費量は日本のわずか100分の1だったようです。つまりこれでも10倍に爆増しているのです。
  店長の肌感覚でも一昔前に比べるとずいぶん魚が食べられるようになったと感じます。その辺の魚屋で見かける魚の種類や量も店長がネパールに通いだした頃より増えた気がします。

ニジマス

  まあ国土の全周が海に囲まれた日本と、まったく海がないヒマラヤの内陸国とで魚の消費量を比べること自体無理があるのかもしれません。
  しかし少ないとはいえ消費が伸びているということはネパール人が魚のおいしさを知っているということで、潜在的な需要は高いと思われます。それを見越してかどうかわかりませんが結構前から各国の協力による魚の養殖が始まっていたのです。
  漁業の支援ではなく養殖です。なにせ内陸国ですから漁港があるわけでもなく、大きな湖があるごく一部の地域を除いてはヒマラヤの雪解け水が流れる中小の河川で投網を投げるか釣りをするというのが伝統的な漁業だったため、伝統漁業にはこれ以上の発展性がないのです。

  さて養殖ですが、20世紀の半ばくらいにインドやイスラエルからネパールの南半分の暖かい地域向けにコイ科の魚が導入されて、今は養殖魚の定番商品として定着しています。上の写真で立派な鯉が売られていますが、多分それも養殖ものでしょう。
  しかし国土の北半分を占めるヒマラヤ山脈は寒冷で鯉には向きません。寒冷地に向くのはトラウト(マスの仲間)です。そこで日本のJICA(ジャイカ 国際協力機構)の支援で宮城県の冷たい水に住むニジマスが導入されて成功を納めています。
下の写真をご覧ください。

ニジマス

ニジマス

  これは店長も参加した宴会の様子です。注目すべきは下側の写真で、これがそのニジマスなのです。スパイシーな薄い衣を付けてサックリと揚げられており、大変美味でした。
  「日本が導入したのだからお前が一番大きいやつを食え」というよくわからない理屈で、店長には皿からはみ出すほどに大きいものよそわれました。ちなみに本当は左上にある赤いソースを付けて食べます。が、あまりに辛いので店長はそのまま頂きました。
  ネパールの飲み会に魚が出る事はあまりありませんが、これならメインディッシュにふさわしい逸品です。

  一方で値段もなかなかのもので、ニジマスはキロ当たり1,600円もします。日本でのニジマスの相場が1,000~1,200円/kgなので、なんと物価の安いネパールで日本より高いのです。
  ニジマス以外のほかの魚は肉類よりちょっぴり高いくらいで、おおよそ500円/kg程度ですからその3倍もする高級食材です。なるほど、その辺の魚屋では見かけなかった訳です。

  魚には肉に比べて良い点があります。DHAとか血液サラサラとかそういうのではなく、食のタブーが多くあるネパールにあって魚はほとんどの民族・カーストが口にできる食材なのです。
  なので今後益々消費が伸びる余地があります。ただ日本の魚のようにもう少し安くならないかなぁ、というのが店長の正直な感想です。

年末のネパール

2024年2月1日

  さて1か月遅れの話題ではありますが、年末年始をネパール出張で過ごしましたので今回は年末のネパールの様子をお届けします。
  日本では年末には年末商戦の大売出しがあったり門松が飾られたりして独特の雰囲気がありますが、ネパールでは大晦日や元旦なんてなんの祝日でもありません。ふつうに学校も登校日です。
  しかしさすがに日本大使館に行けば何らかの年末の雰囲気が味わえるだろうと思い、年の瀬も押し迫った大晦日に首都カトマンズの北にある大使館まで行ってみました。ちなみにこのあたり一帯は日本大使館だけではなく半径200mくらいの範囲に各国の大使館が集まった大使館地帯です。
  結果、日本大使館は年末らしさを微塵も漂わせていませんでした。門松くらい置いてもよさそうなものです。(日本大使館の名誉のために付け加えておきますと、正月の14日には在留邦人を招いて新年賀詞交換会という雅な行事が催されますした)

年末

                                               大晦日の大使館

年末
                  張り紙禁止

  上の写真からお分かりいただけるように結構大きくて立派な建物です。ですがなんと言ってもその特徴は警備の厳重さにあります。詰め所に銃を持った警備員が常駐しており、四方はカメラで監視され、3m程もある塀の上は鉄柵と鉄条網です。当然張り紙禁止です。
  下の写真のように普段は日本映画の上映会など結構催しがあったり資料室(Japan Resource Center)を開放していたりもしているようですが、大晦日は官公庁はお休みのようです。そこだけは日本式なんですね。

年末

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  どうでもいいですが塀の上の鉄条網は大使館では通常装備らしく、そばにあるフランス大使館(下の写真)などは上下二段の鉄条網でした。

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                      フランス大使館

  日本大使館がダメとなると後はどこで年末らしさを味わうことができるでしょうか?年末といえば冬、冬といえばスケート、スケートと言えばファンランドです。
  なんと店長も知らぬ間にカトマンズにファンランドなるスケートリンクがオープンしていたのです!冬といっても最高気温が15度くらいになるネパールですから当然屋内スケート場です。下の写真をご覧ください。

年末

  乾季の青空と日差しのもと、薄着の人々が訪れるのが冬のスポーツ施設ファンランドです。入り口で料金を払います。料金は大晦日当日で800円とネパールでは昼食が3回食べられる結構な金額です。

年末

  中はこんな感じです。スタッフのお姉さんが優しく教えてくれます。ちょっと面白いのはイルカ型の装置です。何と言いますか、自転車の補助輪的な、赤ちゃんの歩行器的な、そんな装置です。日本では見たことがありませんが、まったくスケートを知らないネパールの子供たちがスケートを楽しむためには必要なのでしょう。掴まって滑るだけではなく、またがって両足でこぎ進むこともできます。こうなるともはやスケートと言っていいのかどうか....。

  さあ他にはないでしょうか?年末らしいものは。冬は漬物の季節ですね。1年中あるにはありますがやはりこの時期に多いと思います。
ありますよネパールにも漬物が。
  下の写真ではなにやらカラフルなものが山積みになっています。拡大すると瓶詰であることが分かります。これはアチャールという漬物です。わざわざ買わなくてもご家庭で手作りされることが一般的です。日に当てて発酵させるということが重要らしく、この時期は家の窓際によく並んでいます。
  辛いものが多いので日本人の口に合うかどうかは微妙です。それもキムチのようなうま味がある辛さではなくもっとストレートに辛いです。でもたまーに凄くおいしいのがあったりもします。

年末

年末

  年末らしさを求めて1日ぶらついて収穫はたったこれだけでした。日本では大晦日でもそもそもネパール歴では年末でも何でもないため無理と言えば無理な探索だったかもしれません。それでもいいのです。コロナが明けて4年ぶりにネパールに出張ができた店長は満足です。



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