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バネ鋼

飛び地のヒンドゥー教

2024年9月1日

  店長日記では何度かヒンドゥー教に関する話題を取り上げています。ヒンドゥー教の世界観が非常に魅力的で思わず話したくなることが主な理由ですが、ネパールではヒンドゥー教が生活の隅々にまで浸透しているのでそれを避けていては話ができないことも大きな理由です。という訳で今回もヒンドゥー教のお話です。
 
  世界にはいろいろな宗教があります。2023年の統計によると世界人口に占める信者人口の割合は、キリスト教が約31%、イスラム教が約26%、そしてインド・ネパールなどの南アジアの主要な宗教であるヒンドゥー教は15%と第3位の人口を誇ります。ちなみに4位は仏教で6%です。
  ここで、おやっ?と思われなかったでしょうか? 教科書にも載っている世界三大宗教と言えばキリスト教・イスラム教・仏教です。なぜ仏教徒の2倍以上の信者がいるヒンドゥー教がはずされているのでしょうか?

  ウィキペディアで世界三大宗教を検索すると『地理的、民族的な壁を越えて世界中に広まり社会や文化に大きな影響を与えている宗教』と書いてあります。どうやらヒンドゥー教は12億人の信者を擁するにもかかわらずこの定義に当てはまらないようなのです。
  最初に書いた通り、ヒンドゥー教は南アジア圏の社会や文化に大きな影響を与えていますが、地理的民族的な壁を越えて世界に広まってはいないと見なされている事がその理由です。

  実際、キリスト教とイスラム教はどこの国に行っても多少の差はあれ、まんべんなく教会やモスクを目にすることができます。それに比べると仏教はアジアに偏りがちですが、それでも非常に多くの国で信仰されています。
  一方南アジア以外でヒンドゥー教の寺院を目にすることはめったにありません。特にヨーロッパや南北アメリカ大陸そしてアフリカ大陸では皆無と言っていいかもしれません。これでは地域民族限定宗教と言われても仕方ありません。

  しかしながらヒンドゥー教が地理的民族的な壁を越えて広がった例も僅かにあります。カンボジアやインドネシアやモーリシャス共和国がそうです。
  ただしカンボジアでヒンドゥー教が栄えたのは昔の話です。またインドネシアのヒンドゥー教徒はバリ島に集中しており、国全体としては人口の2%を切っています。島国であるモーリシャスでは人口の約50%がヒンドゥー教徒ですが、それもそのはず住民の大半がインド系の移民で構成されているため、インド人ごとヒンドゥー教が引っ越してきた感があり、地理はともかく民族を超えているかと言われると苦しいです。

  うーむ、やはり世界宗教の仲間入りは難しいですね。それでも店長は南アジア以外の国で初となるヒンドゥー寺院を見るために、上記3か国の中で日本から1番近いカンボジアに行ってみることにしました。
  同じキリスト教でも国によって教会の様式や信仰の仕方に違いがあるように、きっとヒンドゥー教寺院も南アジアの物とは違っているはずで、イヤというほど見てきているネパールの寺院との違いを楽しめるはずだと思ったのです。

  さてやって来ました、カンボジア中部の都市シェムリアップ。その北部に広がるのはかの有名なアンコールワットです。
  現在のカンボジアは仏教国ですが、日本でいうところの鎌倉時代にはヒンドゥー教国であって、アンコール寺院群もその頃にヒンドゥー教の神々のための宮殿として建てられたのだそうです。
  アンコールワットは規模も壮大です。南北1.3km、東西1.5kmの単独のお寺なんて初めて見ました。面積は東京ディズニーランドの4倍弱あります。日光東照宮も比叡山延暦寺もかないません。
 下の写真がアンコールワットです。
 
ヒンドゥー

ヒンドゥー

ヒンドゥー

  一見してネパールのヒンドゥー寺院との差は明らかです。ネパールでは寺院は赤い煉瓦と木で作られているのものが典型的ですが、アンコールワットは主に石材(と一部煉瓦)で作られているようです。下のネパールの寺院と見比べてみてください。

ヒンドゥー

ヒンドゥー

ヒンドゥー

  アンコールワットもかっこいいですが、普段見慣れているせいなのかネパール寺院の方が店長的には渋くて好みです。
  こんなにも壮大な寺院を築き、かつて隆盛を誇ったヒンドゥー教も今や信者の数はカンボジアの全人口の1%にも満たないマイナー宗教となってしまいました。世界宗教への道はかくも厳しいのです。

  しかしそれもいいではありませんか。世界宗教から仲間外れにされても一人我が道を行けば良いのです。ネパール人はそんな些末事を気にする人たちではありません。
  地元の住民が早起きをして薄暗いうちからヒンドゥー寺院の掃除を欠かさず、同じくらい早くから参拝者が絶えないのですから、世界宗教かどうかという事よりもこっちの方がより重要ではないでしょうか。

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