世界で最も美しい谷 ≪ランタン谷≫ その2
2025年4月1日

登り始めてしばらくして、遅れ始めた店長の荷物をガイドのチャイテさんが持ってくれようと声をかけてくれました。でも意地を張って持ってもらいませんでした。なぜならここで持ってもらったら「自力ではランタン谷まで行けない」と宣言したも同然だからです。世界で最も美しい谷に自分だけの力ではたどり着けない、などということを認めるわけにはいきません。
見かねたチャイテさんはその辺の藪にガサガサ入って行き、竹を折って戻ってきました。そして手と足とその辺の石だけで手早く杖を二本作ってしまいました。お見事!手製のトレッキングポールの出来上がりです。
使ってみて分かりました。段差を上る時には一瞬ですが足に強い力が必要になります。一方筋肉は中くらいの力を出し続けるのは得意ですが、一瞬とはいえ足を踏み出すたびにピーク出力を出すのは辛いものがあります。
ポールはそのピークに必要な力の一部を補ってくれるので力が平均化されるのです。その結果、楽に足を動かし続けることができました。素晴らしい!今まで使わなかったのがアホらしくなるくらいの威力です。
強力な武器を得たおかげで12時半にはラマホテルに到着し、お昼ご飯になりました。それにしてもなぜこの辺りがホテルと呼ばれているのか分かりません。小ぶりなロッジが数件あるだけなのですが…? ダルバートとお茶で750ルピー(約750円)と平地の2~3倍のお値段です。さっきから頻繁に道ですれ違うラバの隊商がここまで運び上げているのですから仕方ありません。
道はおおむね川に沿っているため何度も橋を渡ります。こんな感じの橋です。ステンレス製でしょうか。でも橋の下に以前落ちたらしい古い橋の残骸が見えるのは精神衛生上よろしくありません。架け替えた時についでに撤去してほしいものです。
雨季の終わりの激流は、落ちたら水泳のオリンピック選手でもない限り命はないでしょう。
峠に着くとチャイテさんはちょっと待てと言います。ザックからマッチとお香を取り出すと火を付けました。ランタンの神々に捧げる薫香であり安全祈願です。線香がなければ杜松の葉を使ったりします。これはシェルパ族であるチャイテさんを含む高地に住むチベット系の民族の習慣であり、このあたりでは普通のことです。

出発から8時間後、本日のお宿のチューカモンホテルに到着。ホテルのちょっと手前あたりから7,000m級のランタンリルンが良く見えます。

ランタンリルン(7,234m)

台所
店長から一言
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