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バネ鋼

ネパールの教科書 その1<人口問題>

2025年11月1日

  当店には日本側のスタッフと現地ネパール側のスタッフがおります。その現地スタッフの子供が去年高校を卒業して、教科書はもういらないというのでまとめて全部もらってきました。中学までさかのぼったらかなりの量になって、スーツケースがパンパンになりました。
  時々暇を見つけてこの教科書に目を通してきましたが、なかなか興味深いものが見えてきましたのでご紹介します。

  ちょっと大げさかもしれませんが、教科書を見るとその国が分かります。特に歴史や社会の教科書にはその国が世界をどのようにとらえていて何を重要だと思っているのかが強く反映されているように思われます。また「誇り」や「スタンス」のようなものも随所ににじみ出ております。



  これは8年生の社会の教科書です。ネパールの学校制度は日本のような6・3・3制ではなく5・3・2+2制です。なので8年生は日本の中学2年生に相当します。

  左上のつり橋はネパール北部の山岳地帯、中央のネワール様式の建物はネパール中部の旧ゴルカ王宮、右端はネパール南部のタライ平野、左下は多分摂政を務めたラナ家のビール・シンシャー、中央下は言わずと知れたギリシャのパルテノン神殿、右下のおじさんは当時の国連事務総長です。
  つまりネパールの地理と歴史、そして世界との関りを表現した表紙なのです。パルテノン神殿とゴルカ王宮を上下に並べたあたりに誇りが垣間見えます。

  さて内容ですが、最も多くのページが割かれているのは人口問題です。なんとこれだけで77ページを費やしています。それもそのはずで、今ネパールでは人口が爆発的に増加しているのです。
  4年前の統計によると毎年おおむね1%ずつ人口が増え続けており、ここ10年間で270万人の増加となっています。
  山がちで平地が少なく国土も日本の40%しかないヒマラヤの小国にとって+270万人はもう受け入れられる上限ギリギリと言っていいでしょう。ネパールにとって人口増加は待ったなしの喫緊の課題なのです。

  ちなみに日本は同じ期間で230万人の減でした。日本の社会の教科書も人口問題を取り上げていますが、当然論調は真逆で少子化対策に主眼が置かれています。ただ残念なことに手元にある高校の教科書では割かれたページはわずか2ページです。ネパールを見習ってもっと本気を出してほしいものです。

  教科書の記述も中学2年にしてはかなり突っ込んだ本気度が高い表現になっています。一例をあげると個人の取り組みとして16通りもの避妊の方法が解説されていたりします。また社会全体の取り組みとして人口増加の原因を下のように分析しています。

原因
1.文字が読めないことによる無知
  → 2021年時点で識字率は71%、つまり29%は字が読めない
2.貧困
  → 2010年時点で貧困率は25%、つまり4人に一人が1日に300円以下しか稼げない
3.伝統的価値観
  → 女性は早く結婚して子供をたくさん産むのが善である、という風潮
4.宗教的信念
  → 男児を生まないのは悪であり、家が断絶したら死んでから地獄におちる、という信念

  上記の1~4の改善には膨大な時間とお金と努力が必要なのは言うまでもありません。中でも3と4を変えていくのは極めて困難でしょう。ネパールでは伝統や宗教は日本人の想像を遥かに超える力を持っているからです。
  昔の日本にも似たような価値観はありましたが、21世紀の現在の教科書に「地獄に落ちる」事はないので子供は女の子でも問題ないと大真面目で書いてある所に闇を感じます。

  一方で伝統や宗教的信念に正面から逆らってでも人口増加を止めようとする所にこの国の不退転のスタンスを感じます。このまま何も手を打たずに数十年が経過して、270万人の増加があと数回続いたならば、国連から最貧国に指定されているこの小国はすべての資源や予算を食いつぶして崩壊すると分かっているからです。

人口問題

人口問題

  教科書の人口問題の章のまとめとして、大家族(上側の画像)ではなく小さな家庭(下側の画像)を持つことが幸せにつながると力説されています。でも「西洋や日本では小さな家族でみんなハッピー」というようなやや誇張された説明まであるのは如何なものか? 日本は少子高齢化で困ってるんですが…、過ぎたるは及ばざるがごとしです。

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