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バネ鋼

山羊を食べる日

2025年10月1日

  ネパール人は宗教行事を大切にする人達だからでしょうか、ネパールは祝祭日が多い国です。そして全国的な祝祭日だけでなく特定の地域や民族に限定されたローカルな祝祭日もまた多いのです。
  世界遺産に指定されているカトマンズ盆地に住むネワール族には「山羊を食べる日」があります。より正確には「山羊の血を神にささげて、残り物の肉をおいしく頂く日」でしょうか。
  この日は盆地内の会社も学校もお休みになります。なぜならこの日は盆地内の一族が本家(?)に集まり、たくさんの人手を要する一大イベントになるからです。学校や仕事になんて行っている暇はありません。

  この日が近づくにつれて街中で山羊をよく見かけるようになります。大抵は男の人が首にひもをかけられた数頭の山羊を引いて歩いています。ぱっと見は犬の散歩ならぬ山羊の散歩のようにも見えますが、そんなのどかなものではなく山羊にとってはまさにドナドナです。
  行先は肉屋さんではなく各ご家庭になります。そうです、家で生きた山羊を屠るところからこのイベントはスタートするのです。

  ここから先は少々スプラッタですので、苦手な方はやめた方がよろしいかと。

  山羊を捌いてその血を神にささげるのは男の仕事とされています。血をささげた後に山羊は首を落とされます。ここで活躍するのがククリなのです。日本でよく使われているステンレス製の包丁などでは山羊の首は落とせません。力と重さでぶった切る性能に特化した刃物が必要です。

山羊

  首を落としたら次は内臓を取り出します。内臓は中まできれいに洗って煮物にします。体は毛を剃ってから残りの毛を火で完全に焼き切ります。ここまでするのは皮も一緒に食べるためです。
  捌き終わって肉塊と化した山羊を料理するのは女の仕事とされています。皮付きのまま調理された肉は煮込むとトロトロになってまさにコラーゲンです。

山羊
                  内臓をきれいにしているところ

山羊

                    バーナーで毛を焼き切っているところ

  このようなスプラッタな光景はさすがに首都カトマンズの繁華街では見られませんが、バクタプルのちょっとした路地や広場などでごく普通に見られます。
  親族が集まって家の軒下で男も女もごちそうのために力を合わせて作業をする。この風景を見ていて何だか既視感があると思えて仕方がなかったのですが、分かりました、お正月の餅つきです。
  親族が集まる伝統行事である点や子供が周りではしゃいでいる点、男は力仕事、女は料理という点もそっくりです。店長にとって子供の頃に親戚の家で行ったお餅つきが楽しい思い出であるように、ネワール族の子供たちもまたこの楽しいイベントを一生忘れないのでしょう。

  料理ができれば宴会の始まりです。大人数の一族の場合は広場に天幕を張っての大宴会になります。大きさにもよりますが、1頭の山羊からは10kg前後の肉が取れます。親族一同でおなか一杯食べられる量です。伝統衣装のサリーで着飾った女性が多いのも何だか日本の正月みたいです。

山羊

山羊

  会場の隅にはおこぼれの内臓を噛む野良犬や順番待ちの山羊がいたりして何だか諸行無常を感じます。

山羊

山羊

  宴会が終わると飛び散った血しぶきと儀式の痕跡が恐怖映画のワンシーンのようです。しかし誤解してはいけません、下の写真は殺人現場ではなく楽しい伝統行事の跡なのです。

山羊

山羊

  この大イベントの実施には念入りな準備と親族の結束が必要です。もはや学校行事や地域の秋祭りに実施されるだけとなりつつあるほどに廃れてしまった日本のお餅つきとは違って、一族で支えあって今日の繁栄を築いてきた民族であるネワール族にとってこれは現役バリバリの重大行事です。
  ネワール族のパワーを感じたい方は毎年4月末から5月初め(ビクラム歴なので年によって日にちはバラバラです)をカトマンズ盆地で過ごしてみてはいかがでしょうか? 


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