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バネ鋼

宝石を踏んづけて歩く街

2024年4月1日

  当店のネパール側事務所と鍛冶工房があるバクタプルは首都カトマンズのやや東にあります。バスが調子よく走ればカトマンズからバクタプルまで40分といったところです。
  バクタプルは1,000年以上前から独立した王国として栄えた古い街で、旧市街の主要な道には味気ないアスファルトではなく煉瓦と石畳が敷かれた情緒ある街並みになっています。
  当店の拠点がある街なので当然今までに何十回、いや何百回となくその石畳の上を歩いていたのですが、今回新たな発見がありました。

ガーネット

  上の写真をご覧ください。旧市街の典型的な道路です。通る人々が踏んづけているのは灰色の石畳です。どんな石が使われているのかと言うと、下の写真をご覧ください。ちょうど補修中の道があったのでよく分かりますね。厚さ15cmほどの大きめの枕くらいのサイズの石が使われています。

ガーネット

ガーネット

  この状態ではまだ石の表面はざらついてはいるものの均一な質感のただの石です。ですが長年人や車に踏んづけられてその表面は少しずつ削られていきます。すると、全部の石ではありませんが何枚かに1枚の割合で表面になにやら粒状のものが浮かび上がってくる石があります。

ガーネット

 さらに接写すると、、、

ガーネット

ガーネット

  この粒が残っているという事は周囲の母岩より硬くて摩耗しにくい素材であることが分かります。これは何だと思いますか? これはガーネットなのです。
  ガーネットは宝石の一種で、ひび割れがなく大粒で透明度が高いものが指輪や腕輪の装飾に使われたりします。敷石の表面に浮き出ているガーネットの大きさは、小は胡麻粒大から大はビー玉大まで様々です。水をかけてみると色がよく分かります。

ガーネット

ガーネット

  きれいなルビー色をしています。残念ながら透明度は高くありませんので宝石としての価値は低いようです。でも街中を探せば透明な石も見つかるかもしれません。剥がれ落ちたガーネットがきっと石畳の隙間に落ちているに違いないと思った店長は隙間に棒を差し込んでガリガリやったところ、出ましたよ。

ガーネット

  直径5mmほどのガーネットです。店長がここまでやった段階で近所の人が寄ってきて「兄ちゃん何しとるんや?」と声をかけられてしまいました。まあそうですよね、不審な外国人が石畳に水をかけたり棒を突っ込んだりしているのですから。
  たどたどしいネパール語で説明したところ「ガーネットってなんじゃい?」という事になりました。どうやらガーネットを知らないらしいです。それどころか所々石畳の表面がデコボコしていることなど気にも留めていません。昔からそういうものだ、という感覚らしいです。バクタプルの住民は生まれた時からずーと宝石を踏んづけて暮らしてきたのです。

  この石畳のガーネットですが、宝石としてはともかく実用面で非常に役立っているのではないかと店長は推測しています。即ちガーネットのように硬くて摩耗しにくい粒が表面にびっしりと付いているという事は、強力な滑り止めの効果があるという事です。
  北海道では道路が凍って滑りやすくなると氷の上に粗い砂をまいて滑り止めにします。もしそれが無ければさっぽろ雪まつりの会場で転倒による怪我人が激増することでしょう。
  同様に石畳は滑りやすいので雨の日などは車やバイクがスリップして危険です。ですがこのガーネットのおかげで事故がずいぶん防がれているのではないかと思います。
  ただ住人がガーネットの存在に気づいていない為か、坂道やカーブなどの特に危険なポイントに集中的にガーネット入りの石が使われるという事もなく、偶然に任されています。うーん、惜しいなぁ…。

  古都の道路には意外な秘密が隠されていました。きっとまだまだ沢山の秘密が隠れていて店長に気付かれるのを待っているに違いありません。魅力が尽きないバクタプルなのでした。


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