カートをみる ご利用案内 お問い合せ サイトマップ
RSS
バネ鋼

英語教育の動機と実益

2023年7月1日

  今から数年前、新型コロナウイルスなんてまだどこにもなかった頃にヒマラヤ山中のタルケギャンという村を訪れたことがあります。ローカルバスで行けるところまで行って1泊してから更に1日歩いて辿り着く、そんな村です。
  辛うじて電気は来ていますが電波は届いていない山奥の村で驚くべき光景を目にしました。泊まった宿の子供が親のタブレットをいじって遊んでいるのかと思いきや、英語の勉強をしていたのです。
  ひとまず下の動画をご覧ください。


  推定年齢3歳くらいかと思われる子がアルファベットの発音練習をしています。途中で放り出すことも無くAからZまでしっかりやっておりました。
  やはり子供は覚えが早いのか発音は店長よりむしろ上です。

  翌日タルケギャンから更に1日歩いて山奥のメラムチガオンという村に着きました。ここで更に驚かされることになりました。
  ここで泊まった宿の子供(推定7歳)が学校の宿題をしていました。どれどれと覗いてみると、、、英語です。しかもその内容は日本なら中学1年の教科書でもおかしくないものです。
ちょっと宿題をここに書き写してみると、

Can you answer these Questions?
 1. Dina’s father has four daughters.
If the first daughter’s name is Miss One, the second daughter’s name is
Miss Two, and the third daughter’s name is Miss Three.
What is the fourth daughter’s name?

[店長訳]
あなたは質問に答えられるかな?
1.ダイナのお父さんには4人の娘がいます。
もし最初の娘の名前が1さんで二番目の娘の名前が2さん、三番目の娘の
名前が3さんなら、四番目の娘の名前は何でしょうか?

  特別な英語教室に通っているわけではありません。私立の学校でもありません。ごく普通の公立の小学校の教科書(下の写真)です。日本ならこれを7歳児にやらせるでしょうか?

英語

  こう言っては何ですが、ここはヒマラヤの山奥の村です。英語を使う機会などめったにありません。それどころかネパールは多民族国家なので、田舎では国語であるネパール語すら怪しい高齢者がたくさんいるというのに、どうしてここまで英語に力を入れるのでしょうか?

  それは英語ができることが高収入に直結しているからなのです。日本では英語ができるからというそれだけで直接高収入につながることはまずありません。なぜなら日本は日本という国の中だけで産業が十分にあって国外に出る必要が薄いからです。
  一方ネパール国内にはこれと言った産業がありません。観光業も華やかな割にはGDPに占める割合は僅かです。最大の産業である農業は生産性が低く高収入は望めません。高い収入を望むなら外国に出るのが早道なのです。

  では外国に行くとどのくらい稼げるのでしょう?
  最新の統計では外国(インドは除く)で出稼ぎしているネパール人は約35万人で、全人口の1%強です。しかしこの1%が国内最大の産業である農業に匹敵する1兆円を稼ぎ出しているのです。
  農業人口は約1900万人なので、その賃金格差は50倍以上です。これはもう畑を耕している場合ではありません。

  さて、ネパール人の出稼ぎ人口が多い順に国名を並べると、マレーシア、カタール、サウジアラビア、UAE、クウェート、、、となります。
  これらの国では無論ネパール語は通用しませんし、言葉が話せない外国人に仕事はありません。一方英語はマレーシアでは準公用語扱いですし、その他の中東諸国ではアラビア語が公用語ではありますが各国から働きに来ている人が多いせいでかなり英語も通じます。
  かくしてネパール人が外国で働くための第一の条件は英語となります。

  しかし話を聞くと出稼ぎも決して楽ではありません。体を壊す人も多く、そうなっても何の保証もありません。
  でも50倍ですよ?歯を食いしばって2~3年頑張って、あとは故郷に帰って一生楽に暮らそうという気にもなります。

  ネパールには英語を本気で学習する動機と実益がある事が分かりました。当店の現地スタッフの子供達も今では英語がペラペラで、日頃英語を使う機会もない店長の英語力など遥かに追い越されています。特にその必要もない日本人が英語力で勝てるはずがありません。
 「スタッフの子供を見返したい!」などという矮小な動機ではこれからも店長の英語が上達することは無いでしょう。でも片言であってもネパール語を憶えてネパールの商売をしている店長ですから、実は英語を学んで出稼ぎに行くネパール人と同じ地平に立っていると言えなくもありません。まあ全然稼げていませんけど…。


ページトップへ