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バネ鋼

ラバはヒマラヤの軽トラ

2023年1月1日

  皆さんは駄獣(だじゅう)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 駄獣とは背中に荷物を載せて運ぶ家畜の事です。ちなみに背中ではなく車やソリに荷物を載せて曳いた場合は駄獣とは言いません。大抵の人は時代劇や西部劇などで駄獣を見たことがあると思います。

  昔は世界中で活躍した駄獣も文明の発達によってトラックや貨車にとってかわられてしまいました。日本などでも馬借(ばしゃく)という職業が成り立っていましたが、近代以降はもはや目にすることはほぼなくなってしまいました。
  しかしいまだ現役で駄獣が活躍し、駄獣なしでは生活が成り立たない土地があります。車が走れない山間部や砂漠、不整地が広範囲に広がっている場所です。ネパールで言うなら北部のヒマラヤ山脈全域がそれにあたります。ヒマラヤも最近は車道が通ったとはいえ、まだ90%以上の村はその恩恵にあずかっていません。

  荷物を運ぶなら背中に載せるより荷車を引かせた方がずっと大量の物を運ぶことができます。馬の背中で長時間運べる荷物は100kgほどですが、馬車は馬1頭で1.5トンの荷物を運べたと言います。
  しかしそもそも馬車が走れるなら自動車も走れるわけで、わざわざ馬を使う必要はありません。駄獣はたとえ運べる荷物が少なくても、人が歩いて通るのがやっとの道で村々が結ばれたヒマラヤで必要不可欠な運搬手段なのです。

  村々を結ぶ道がどういう道なのかと言いますと、下の写真をご覧ください。傾斜30度ほどの急斜面に沿って幅60cmの道が延々と続いていたり、岩ゴロゴロだったり。冬はここに更に雪が積もるのですから車が走るのは到底無理です。

 
 
軽トラ

軽トラ

  駄獣の中でもヒマラヤで最も活躍しているのがラバです。ラバはロバと馬の雑種です。体の大きさや見た目はそのままロバと馬の中間くらいで、両者のいいとこ取りの性質を持っています。
  ロバのように悪路に強く、馬のように大量の荷物を運べます。またロバのように丈夫で粗食に耐え、馬のようにおとなしいと言われます。下の写真をご覧ください。

                  背中にニワトリを積んだラバ

  山のふもとの比較的大きな町などでは早朝に荷物を満載したラバの隊列が出発を待っている光景に出くわす事があります(下の写真)。まるで日本の運送屋の駐車場のようです。維持費が安くて多少道が悪くてもOKでそこそこ荷物が積める、ラバはまさにヒマラヤの軽トラと言えましょう!


                             ラバの駐車場?

 
                               朝7時には出発!

  トレッキング中によく目にするのがこのラバなのです。ロッジの食料も村の日用品も多くはラバが運び上げてきたものなのでしょう、本当に役に立つ駄獣です。
  ただ一つだけ残念なのがラバは非常に頑固だと言われている点です。おとなしいので暴れたりはしませんがご機嫌を損ねると押しても引いても一歩も動かなくなってお手上げなのだそうです。ですが結構ヒマラヤに通っている店長でもそういうシーンを見たことがないので、飼い主の扱いがよほど悪かった時だけなのかもしれません。

  さて、ヒマラヤでは富士山頂より高い場所にも村があります。しかし高度3,500mを超えると空気が薄すぎてラバでは荷物を運べなくなります(人間でも高山病になる高さです)。なのでそこから上はゾッキョが駄獣として活躍します。
  ラバより更に聞きなれない言葉であるゾッキョとは、ヒマラヤの高地に住むヤクと牛との雑種(のオス)の事です。牛の説明はいらないと思いますがヤクはご存知でしょうか?下の写真のような奴です。ちょっと毛深い牛のようにも見えますが、ロバが馬ではないようにヤクも牛ではありません。

軽トラ
                                         ヤク

  ゾッキョは薄い空気や寒冷など過酷な環境下でラバよりも重い荷物を運ぶことができます。なら初めからゾッキョだけ使えば良さそうに思えますが、逆に濃い空気や温暖な気候ではゾッキョは生活できないのでこうした住み分けがされている訳です。
  高地の村々を結ぶ道を歩いていると時々下の写真のようなゾッキョを目にします。


                                荷物を積んだゾッキョ

  しかしながら駄獣と言えども万能ではありません。ヒマラヤには川にただロープを渡しただけの踏み板もない橋(?)や垂直に近い崖を登攀しなければいけない場所があります。こういう場所は駄獣では越えることができません。
  また家の柱や巻いたトタン屋根のように大きくて重くて分解できない荷物は1頭の駄獣に載せられません。無理に2~3頭の駄獣を並べて載せられない事はありませんが隘路やカーブで足を踏み外して崖下に転落することが目に見えています。
  そんな場合はどうやって荷物を運ぶのでしょうか? そうです、人間です。最後に頼れるのは人間なのです。人間は器用なうえに駄獣と違って協力し合える動物なので、人間が何人かいればロープ橋でも崖でも大きな荷物でもOKです。ある意味最高の駄獣と言えましょう。

軽トラ


  山村の人たちはちょっとしたものなら日常的に何でも自分で運んでしまいます。ただし先月の店長日記にあるように村人の足腰の強さは尋常ではありません。村人にとっては「ちょっとしたもの」でも、上の写真のようにとても店長が運べるシロモノではありません。
  もしオリンピックに「高所悪路の荷運び」という競技があったらネパール史上初の金メダルも夢ではないでしょう。

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