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バネ鋼

南アジアの武器・武具 その5

2019年4月1日
  南アジアの武器・武具シリーズ第五弾はブンディ・ダガー、またの名をジャマダハルと言います。
  これまたファンタジーの世界ではお馴染みの武器ですね。インド・ネパール周辺ではククリ同様伝統ある武器なのですが、ククリがネパール軍やイギリス軍グルカ旅団の正式採用品で現役バリバリの武器であるのとは違い、ブンディ・ダガーはもう実戦で使われることはなく、もちろん軍隊に配備されているという話も聞きません。

  ブンディ・ダガーは両手に一つづつ持つか、タルワールと同じくダルとセットで使われることが多いようです。下の写真は19世紀初頭のパルパ戦争の戦利品としてネパールの国立博物館に展示されていたものです。

ダガー

  ブンディ・ダガーの持ち方は、刀身の後ろの横に二本並んだ金属棒を握り込んで刀身と反対側に伸びている金属棒を前腕と平行にします。握りこぶしの延長上に刃がある感じです。
  この”握りこぶしに刃が生えた”という点がポイントで、その運用はボクシングの技に近いものがあります。それに加えてボクシングにはない横に斬り払う使い方もでき、腕と平行な金属棒部分で相手の斬撃を受け止めることもできます。
  ブンディ・ダガーは貫通力が高いため、相手が甲冑を着ていても甲冑の弱い部分を貫通させたり、切っ先を甲冑の隙間に差し込んで体重をかけて突き通す事ができます。
  しかし近代戦では銃器の進歩が著しく、甲冑では小銃弾を防ぎきれなくなっため20世紀に入るころには装甲騎兵による抜刀突撃も甲冑そのものも用いられなくなりました。更に接近戦や白兵戦が激減して、戦闘は主に遠くから撃ち合うものに変化してしまいました。これではブンディ・ダガーの使いどころがありません。これがブンディ・ダガーが戦闘の表舞台から消えていった原因の一つなのでしょう。

  さて、表舞台に出ることがない武器と言えばもう一つ南アジア圏で用いられてきたものがあります。ビチュワです。ブンディ・ダガーにくらべてビチュワの知名度は格段に低いと思います。それもそのはず、ビチュワは暗器(隠し武器)として使われることが多く、あまり人目に触れるものではなかったのです。
  ビチュワは袖や帯の中に見えないようにして持ち歩きターゲットの内臓深く差し込んで素早く立ち去るという恐ろしい使われ方をされてきました。日本や中国で言うなら匕首のような使われ方です。
  下の写真をご覧ください。これはネパールの国立博物館所蔵のビチュワです。握力が弱い女性でもしっかり刺し通せ、かつ取り落とすことのないループ状になったグリップが特徴です。ビチュワとは元々サソリの尾という意味で、ブレードは細身の波打った形(写真左)か錐のように尖った形(写真右)をしています。

ダガー

  実際に使われた手裏剣の現存数が少ないように、このビチュワも表立って使われるものではないため大変に珍しい物で、このように博物館で展示されている例はネパールの国立博物館の武器庫以外では見たことがありません。

  もう一つおまけに表舞台に出ることのない刀剣を紹介しましょう、ラム・ダオです。これは生贄の首を刎ねることに特化した刀で、戦闘用ではありません。ネパールやインドといった神々に生贄を捧げる文化を持つ南アジアの国々で小規模に、しかし連綿と10世紀以上にわたって使われ続けてきた重要な宗教上の道具なのです。
  ラム・ダオは下の写真のように先端部に重心が置かれた独特な形状をしており、写真では分かり難いですがブレードに”目”が象嵌されています。刃渡り1mもあるブレードの形状は一刀のもとに首を刎ねるための機能的なものでしょう。そして”目”は呪術的な意味合いが濃いものだと思われます。

ラム・ダオ

  しかし妙にファンタジーの世界ではこの形状の大刀を見かけることがあります。ブレードの厚みや幅、長さからして日本刀(本差)3~4本分の重さは優にある上に先端部の重量が大きすぎますので、両手で持って振り上げて振り下ろすのが精いっぱいのシロモノでおよそ戦闘では実用的ではないはずなのですが、やはりこのインパクトのある形状に魅せられるのでしょう。

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