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バネ鋼

南アジアの武器・武具 その3

2019年1月1日
  南アジアの武器・武具シリーズ第三弾はタルワールです。恐らく「インド人の刀」として最も一般的に思い浮かべられるのがこのタルワールでしょう。肖像画で見るインドのマハラジャ(藩王)がよく腰に佩びているのがまさにこれです。

タルワール

  タルワールはカーブした刀身に十文字の鍔と中央部が膨らんだグリップと円盤状の柄頭という一度見たら忘れられない特徴的な形をしています。ちなみにタルワールという言葉は古代インドのサンスクリット語で”片刃の剣”という意味なのだそうですが、展示されているものは先端部の峰に刃がつけられていわゆる疑似刀になった一部諸刃の剣でした。本当に初期のタルワールは言葉通りの片刃だったのかもしれません。

  下の写真はネパールの国立博物館所蔵のタルワールで18世紀の物です。このタルワールは誰あろうゴルカ王朝第10代君主にしてネパール王国の初代国王になった建国の父、プリトビ・ナラヤン・シャーその人の持ち物でした。
タルワール

  鍔元から刃の先端まで獅子や龍といった動物や蓮の花など一連の精巧な象嵌が施され、まさに王家の刀剣です。これほど凝った作りのタルワールにはまずお目にかかれないでしょう。タルワールは南アジア圏では今でも儀礼用に式典などで使われることがあります。

  続いてソースン・パタです。これは現代では儀礼用としてもほとんど見かけることのなくなった刀剣です。下の写真はネパールの国立博物館所蔵のソースン・パタです。
 真ん中で交差している長剣がソースン・パタで、刃渡りは80cm強、”く”の字型の内側部分が刃になります。更に先端の20cmほどは疑似刀になっており峰部分にも刃があります。
 
ソースン・パタ

  ソースン・パタは斬撃の際に力が逃げにくい構造から”なで斬る”のではなく重さと勢いで”ぶった切る”ククリと同じタイプの刀剣だと思われます。刀身の厚みが優に1cm以上とぶ厚いことがそれを更に裏付けています、さすがは対甲冑用重刀剣です。
  もし同じ長さの日本刀だったら厚み(重ね)は鍔元近くで7~8mm、刀身の幅もソースン・パタの2/3くらいなので、このソースン・パタのトータルの重さは日本刀二本分といったところでしょう。にもかかわらずグリップの形状からこの重量を片手で扱ったことがうかがえます。

  ソースン・パタといいソースン・パタの右側にある化け物じみたククリといい、この時代の人間は現代人より腕力が遥かに強かったのでしょうか? 確かにこれで切り付けられたら甲冑を着ていても無事で済むとは思えません。しかし銃器の発達によってその甲冑も時代遅れとなり、ソースンパタもまた現役を退くことになったのです。

 

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