ブレード
分厚いククリの峰 刃先
ククリのブレードは通常のナイフに比べて非常に分厚く作られています。この重さと頑丈さがヤギの頭を一撃で落とす切断力を生むのです。今までに見た最大のククリは水牛用のククリですが、まさに刃渡り1mの斧か鉈といった風情で、女性では振り上げることも難しいでしょう。それほどククリのブレードは重 く、厚く、頑丈一徹なのです。実際、ククリが折れたという話は聞いたことがありません。よく鍛えられた厚さ1cm(あるいはそれ以上)のバネ鋼を人間の力で折ることは不可能と言っていいでしょう。
またククリのブレードはほぼフラットグラインドですがよく見るとエッジ近傍だけ僅かにカーブしたごく弱いコンベックスグラインド(いわゆる蛤刃)になっています、これには訳があります。
ククリはその重さと腕力で骨ごと肉をぶった切るような使い方をされるナイフです。鋭い刃付けをすれば切れ味は上がりますが、骨に当たって刃が欠ける危険が高くなります。骨をぶち割るにはある程度切れ味を犠牲にしてでも強度が高く刃が欠けにくいコンベックスグラインドでなくてはならないのです。
同じ理由からブレードもキンキンに焼入れされてはいません、硬度をやや落としてでも粘り優先です。ですから他のユーティリティナイフを使い慣れている方からすると”刃付けが甘い”、”焼きがイマイチ”と感じられると思います。
では使い物にならないのか? いえいえククリはヤギの頭を切り落とすところから始まって丸一頭さばいても切れ味がほとんど落ちません。まずまずの切れ味が長続きして刃にダメージを受けづらいのがククリなのです。
逆に切れ味では日本刀が最高ですが、日本刀でヤギをさばこうと思うとかなり困難でしょう。日本刀で人間の頭を落とすには相当な技量を必要とするそうです。しかしククリならばその辺のおじさんが普通にヤギの頭を落としています。日本刀とククリとではその設計思想からして違うのです。
ネパールのククリは日常的にかくも手荒く使い続けられる前提で作られていますのでこのくらいの刃付けと焼きが落とし所なのです。実際ネパール軍ではククリをスコップ代わりにして石だらけの地面に穴を掘ることにまで使いますので、キンキンに硬度を上げて剃刀のような刃付けをするとどうなるかはご想像通りです。
もちろんお買い上げ後にユーザー各々の使い方に合わせて研ぎ直していただいても結構ですが、当店から出荷されている状態がネパールで日常ごく普通に使われているコンディションに合わせた状態であるとお考えください。
ブレード
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