カートをみる ご利用案内 お問い合せ サイトマップ
RSS
バネ鋼

おいしいニジマス

2024年3月1日

  店長は魚が好きです。煮て良し、焼いて良し、蒸しても揚げても何をしてもおいしい食材です。でもネパールでは魚がそれほど食べられていません。
  年間の一人当たりの水産物消費量も日本の10分の1です。昔はさらに少なく、統計によると1982年時点で比べると一人当たりの消費量は日本のわずか100分の1だったようです。つまりこれでも10倍に爆増しているのです。
  店長の肌感覚でも一昔前に比べるとずいぶん魚が食べられるようになったと感じます。その辺の魚屋で見かける魚の種類や量も店長がネパールに通いだした頃より増えた気がします。

ニジマス

  まあ国土の全周が海に囲まれた日本と、まったく海がないヒマラヤの内陸国とで魚の消費量を比べること自体無理があるのかもしれません。
  しかし少ないとはいえ消費が伸びているということはネパール人が魚のおいしさを知っているということで、潜在的な需要は高いと思われます。それを見越してかどうかわかりませんが結構前から各国の協力による魚の養殖が始まっていたのです。
  漁業の支援ではなく養殖です。なにせ内陸国ですから漁港があるわけでもなく、大きな湖があるごく一部の地域を除いてはヒマラヤの雪解け水が流れる中小の河川で投網を投げるか釣りをするというのが伝統的な漁業だったため、伝統漁業にはこれ以上の発展性がないのです。

  さて養殖ですが、20世紀の半ばくらいにインドやイスラエルからネパールの南半分の暖かい地域向けにコイ科の魚が導入されて、今は養殖魚の定番商品として定着しています。上の写真で立派な鯉が売られていますが、多分それも養殖ものでしょう。
  しかし国土の北半分を占めるヒマラヤ山脈は寒冷で鯉には向きません。寒冷地に向くのはトラウト(マスの仲間)です。そこで日本のJICA(ジャイカ 国際協力機構)の支援で宮城県の冷たい水に住むニジマスが導入されて成功を納めています。
下の写真をご覧ください。

ニジマス

ニジマス

  これは店長も参加した宴会の様子です。注目すべきは下側の写真で、これがそのニジマスなのです。スパイシーな薄い衣を付けてサックリと揚げられており、大変美味でした。
  「日本が導入したのだからお前が一番大きいやつを食え」というよくわからない理屈で、店長には皿からはみ出すほどに大きいものよそわれました。ちなみに本当は左上にある赤いソースを付けて食べます。が、あまりに辛いので店長はそのまま頂きました。
  ネパールの飲み会に魚が出る事はあまりありませんが、これならメインディッシュにふさわしい逸品です。

  一方で値段もなかなかのもので、ニジマスはキロ当たり1,600円もします。日本でのニジマスの相場が1,000~1,200円/kgなので、なんと物価の安いネパールで日本より高いのです。
  ニジマス以外のほかの魚は肉類よりちょっぴり高いくらいで、おおよそ500円/kg程度ですからその3倍もする高級食材です。なるほど、その辺の魚屋では見かけなかった訳です。

  魚には肉に比べて良い点があります。DHAとか血液サラサラとかそういうのではなく、食のタブーが多くあるネパールにあって魚はほとんどの民族・カーストが口にできる食材なのです。
  なので今後益々消費が伸びる余地があります。ただ日本の魚のようにもう少し安くならないかなぁ、というのが店長の正直な感想です。

年末のネパール

2024年2月1日

  さて1か月遅れの話題ではありますが、年末年始をネパール出張で過ごしましたので今回は年末のネパールの様子をお届けします。
  日本では年末には年末商戦の大売出しがあったり門松が飾られたりして独特の雰囲気がありますが、ネパールでは大晦日や元旦なんてなんの祝日でもありません。ふつうに学校も登校日です。
  しかしさすがに日本大使館に行けば何らかの年末の雰囲気が味わえるだろうと思い、年の瀬も押し迫った大晦日に首都カトマンズの北にある大使館まで行ってみました。ちなみにこのあたり一帯は日本大使館だけではなく半径200mくらいの範囲に各国の大使館が集まった大使館地帯です。
  結果、日本大使館は年末らしさを微塵も漂わせていませんでした。門松くらい置いてもよさそうなものです。(日本大使館の名誉のために付け加えておきますと、正月の14日には在留邦人を招いて新年賀詞交換会という雅な行事が催されますした)

年末

                                               大晦日の大使館

年末
                  張り紙禁止

  上の写真からお分かりいただけるように結構大きくて立派な建物です。ですがなんと言ってもその特徴は警備の厳重さにあります。詰め所に銃を持った警備員が常駐しており、四方はカメラで監視され、3m程もある塀の上は鉄柵と鉄条網です。当然張り紙禁止です。
  下の写真のように普段は日本映画の上映会など結構催しがあったり資料室(Japan Resource Center)を開放していたりもしているようですが、大晦日は官公庁はお休みのようです。そこだけは日本式なんですね。

年末

年末

  どうでもいいですが塀の上の鉄条網は大使館では通常装備らしく、そばにあるフランス大使館(下の写真)などは上下二段の鉄条網でした。

年末  
                      フランス大使館

  日本大使館がダメとなると後はどこで年末らしさを味わうことができるでしょうか?年末といえば冬、冬といえばスケート、スケートと言えばファンランドです。
  なんと店長も知らぬ間にカトマンズにファンランドなるスケートリンクがオープンしていたのです!冬といっても最高気温が15度くらいになるネパールですから当然屋内スケート場です。下の写真をご覧ください。

年末

  乾季の青空と日差しのもと、薄着の人々が訪れるのが冬のスポーツ施設ファンランドです。入り口で料金を払います。料金は大晦日当日で800円とネパールでは昼食が3回食べられる結構な金額です。

年末

  中はこんな感じです。スタッフのお姉さんが優しく教えてくれます。ちょっと面白いのはイルカ型の装置です。何と言いますか、自転車の補助輪的な、赤ちゃんの歩行器的な、そんな装置です。日本では見たことがありませんが、まったくスケートを知らないネパールの子供たちがスケートを楽しむためには必要なのでしょう。掴まって滑るだけではなく、またがって両足でこぎ進むこともできます。こうなるともはやスケートと言っていいのかどうか....。

  さあ他にはないでしょうか?年末らしいものは。冬は漬物の季節ですね。1年中あるにはありますがやはりこの時期に多いと思います。
ありますよネパールにも漬物が。
  下の写真ではなにやらカラフルなものが山積みになっています。拡大すると瓶詰であることが分かります。これはアチャールという漬物です。わざわざ買わなくてもご家庭で手作りされることが一般的です。日に当てて発酵させるということが重要らしく、この時期は家の窓際によく並んでいます。
  辛いものが多いので日本人の口に合うかどうかは微妙です。それもキムチのようなうま味がある辛さではなくもっとストレートに辛いです。でもたまーに凄くおいしいのがあったりもします。

年末

年末

  年末らしさを求めて1日ぶらついて収穫はたったこれだけでした。日本では大晦日でもそもそもネパール歴では年末でも何でもないため無理と言えば無理な探索だったかもしれません。それでもいいのです。コロナが明けて4年ぶりにネパールに出張ができた店長は満足です。



失われつつある壁画

2024年1月1日

  ヒマラヤの村々を歩いていると村の入り口に道をまたいで作られた門というか小屋のようなものが建っていることがあります。これはカンニと言う塔門で、以前の店長日記でも触れましたが悪い精霊や悪霊が村に侵入することを防ぐためのものです。

  下の写真はピサンのカンニとその内部です。

壁画

壁画

壁画

  道をまたいでいるので中に入ると短いトンネルのようです。上を見上げると天井と四方の壁に壁画が描かれています。描かれているのは曼荼羅だったり護法尊や仏だったりで、さすがにこんな神聖な空間には悪いものは入ってくることはできないでしょう。

  こうした壁画はカンニだけではなく村内のお寺の壁にも描かれています。下の写真はジャルコット村のお寺の壁画です。

壁画

壁画

  一目でお分かりいただけるように、あちこちがかなり傷んでいます。ヒマラヤトレッキングが趣味の店長は20数年前から各地の村々でこのような壁画を目にしているのですが、訪れるたびに損傷が激しくなっていくように思われるのです。
  特に2015年のネパール大地震でそれが加速しました。ひび割れどころかカンニごと倒壊したものもあります。にもかかわらず、国連から世界最貧国の一つに指定されているネパールですから貴重な文化財であっても修復するお金がありません。人命に直結する家屋や生活インフラが最優先だからです。

  「壁画」であるということが保存を難しくしているのでしょう。仏像や装飾品なら移設したり博物館に展示するのも簡単です。しかし描かれた絵を傷つけずに数トンはある壁ごと運搬するのは困難ですし、それがロクに道路もなく重機も入れないヒマラヤの山奥にあるとなると困難を通り越して不可能の域に近づきます。
  ヘリで空輸するにしても空気が薄いのでホバリングが難しくなって重量物は運べませんし、そもそもそんなお金がありません。手詰まりなのです。

  またネパールは政府が文化財におかけをかけるということをあまりしない国のように思えます。というのは、地震があった3年後にネパールを訪れてみるとインフラや公共施設はかなり復旧しているのに国立博物館はまだまだ閉鎖中の展示館があったからです。
  首都にある国内最大の国立博物館でもそういう扱いなのですから、たとえ地震がなかったとしてもヒマラヤ山中の寂れた村の壁画などに手が回るはずありません。多分この種の壁画の多くはあと数十年のうちに徐々に失われていくのでしょう。

  ネパールで十数年前に王政が崩壊して共和制となった事を店長日記で明治維新に例えたことがありました。明治維新後には日本でも廃仏毀釈運動が起きて多くの仏像や文化財が溶かされて再利用されたり、廃寺となって放置されるままに朽ちていきました。
  日本ではもうそれは取り返しがつきませんが、ネパールではまだ取り返せそうなのです。ビル・ゲイツとかロックフェラーとかイーロン・マスクとか誰でもいいから何とかしてくれないかと妄想してしまう店長なのでした。

ジュカが来る

2023年12月1日

  ジュカって何だかご存じでしょうか?ネパール語でヒル(蛭)のことです。血を吸わないコウガイビルは別ですが、血を吸うタイプのヒルなんて都会で暮らしていればまず見たこともないでしょうし、特定の条件下でしか生きられないので田舎で暮らしていたって普通はなかなかお目にかかれません。でもそれは日本での話です。

  ネパールでもさすがに都市部にはめったにおりません。しかし山間部では、特にヒマラヤ山中にはヒルがいくらでもおります。それはもうたくさんおります。なぜならネパールには雨季と乾季があり、雨季にはほとんど毎日のように雨が降るのでヒルが好むジメジメした環境が生まれやすいからです。しかも野生動物も多いため血を吸う機会もまた多いのでしょう。
  一方、乾季になると姿を消します。短めのミミズのような見た目通り、乾燥した環境では生きられないからです。といっても死ぬわけではありません。乾季には落ち葉の下で休眠するだけで、数年は生きると言われています。

  店長がトレッキングするのは主に雨季と乾季の狭間の季節ですので、そこそこヒルに出会います。こういう画像が大丈夫な方は下の動画を再生してみてください。


                                 雨合羽に付いていたヒル

   見た目はミミズですがその動きはシャクトリ虫のようで、かなり速く移動します。1分も目を離せば服の中に入り込まれます。しかも手で払っても全然落ちません。触りたくないけどつまんで引っ張るしかありません。
  また速いだけではなく体の端にある吸盤でくっついた場所を足場にして、人の気配がする方に向かってかなり先まで体を伸ばすことができます。
  下の動画をご覧ください。

                                                壁に張り付いていたヒル

  こんなしぶといヒルですが、実はヒマラヤ山中ならどこにでもいるというわけではありません。草地や森の中にはいても、むき出しの乾いた地面にはまずいません。またヒルがいない安全な場所としては村の中があげられます。村内では1年を通してあまりヒルを見ることはありません。人が暮らす村内では見つけ次第村人に抹殺されることに加えて、そもそも樹木が少ないうえに落ち葉は掃き集められて家畜の糞と混ぜて堆肥になりますから休眠することができないのです。
  もう一つは標高が高い地域です。標高が3,500mくらいになるとほとんど見なくなります。原因はたぶん大型の野生動物が少なくなるためと、標高が高すぎて木が育たない森林限界にあると思います。吸血できる動物や休眠する場所がなければ生きていけないからです。

なのでヒルに出会わずにトレッキングするコツは、
 ・乾季を選ぶ
 ・一気に標高を上げてしまい、中途半端に低い地域にとどまらない。
 ・低い地域に宿泊する時はあまり草地や森の中をうろつかず、村内にいる。
という感じでしょうか。

  できれば楽しくトレッキングをしたいものです。上記の条件から外れてトレッキングを計画されている方は文明の利器をご持参ください。日本には殺ヒルスプレーも忌避剤も売っていますので。



ガソリンが高い

2023年11月1日

  ガソリンが高いです。日本でも高いですがネパールでも異様に高いです。
  かたや島国、かたや内陸国の日本とネパールですが石油に関しては同じような立場にあります。なぜなら日本もネパールも産油国ではないため石油はほぼすべて輸入に頼る事になるからです。

  国内産ではないということは世界情勢の影響を大きく受けるということで、コロナで世界需要が減れば価格が下がり、戦争が起こると戦略物資であるため価格は上がります。
  日本の場合は石油は9割近くを中東諸国からタンカーで輸入しています。しかしネパールは海がない内陸国なので海路での大量輸送ができません。なのでほぼすべて隣国のインドからの陸送になります。
 ちなみに中国とも国境を接していますがヒマラヤ山脈を越えての過酷な陸送になるためか、中国産の石油は聞いたことがありません。

 さてではどのくらい高いのでしょう? 下の写真をご覧ください。
 ここはその辺にあるごく普通のサービスステーションです。緑に囲まれて日本よりオープンな感じがします。でもオープンではない部分もあります。その下の写真をご覧ください。

ガソリン


ガソリン

 給油装置の横にゴツイ金網が? これは盗難防止用の鉄柵です。夜に店を閉めるときは鉄柵で給油装置を囲うのです。ガソリンは高価なのでここまでしないと安心できません。当然、誤魔化しができないようにセルフスタンドなんてものもありません。まあ人件費が安いのでその必要もないですが。
 給油装置はこんな感じです。

ガソリン

 ちょっと見にくいのでメーターを拡大してみました。1リットルあたり183.25ルピーです。日本円だと大体200円くらいになります。

ガソリン

 これって日本より高い値段ですよね。日本とネパールの物価差をザックリ10分の1と考えると、リッター2,000円と言っているようなものです。いかにとんでもない価格かお分かりいただけると思います。
首都圏のサラリーマンの平均月収が2~3万円のネパールですから100~150リットル給油すると1か月分の給与が吹っ飛びます。
 あまりに高いので車の燃料タンクからのガソリンの窃盗もしょっちゅうで、自衛策として満タンにせずにちょいちょい継ぎ足しながら走ったりします。上の写真でも1.38リッターしか入れていません。

 石油の高騰には様々な要因がありますが、短期的には恐らくどうしようもないのでしょう。どうしようもあればとっくに改善されているはずです。
 一方で産油国では信じられないような価格でガソリンが売られています。最近の調べによると、ベネズエラでは何と信じ難いことに1リットル0.56円です。1円以下ですよ?うまい棒一本で20リットルくらい買えるんですよ?日本やネパールでも石油がジャンジャン採れるといいのですが、こればっかりは地質的な要因でいかんともしがたいものがあります。

 コロナの規制も解けたことですし、地質的な要因はともかく経済的な要因は改善できるはずですので、日本とネパールのこれからに期待しましょう。

シェルパ族

2023年10月1日

  突然ですが皆さん、シェルパ族をご存知でしょうか? 山登りをする方ならシェルパという言葉を知らない人の方が少ないでしょう。シェルパと言えば既に山で荷物を運ぶ人の代名詞みたいになっているので、ネパールに50以上あると言われる民族の中でも日本での知名度ナンバーワンではないでしょうか。

  ちなみにネパール旅行をして首都カトマンズに行った場合、周りにいるネパール人の大部分はネワール族です。なので外国人にネパール人として認識されているのはおおむねネワールの人たちなのだと思います。
  一方シェルパ族の顔立ちや服装はネワールとはかなり違います。典型的なシェルパのおじさんは下の写真のような感じで、腹帯に挿したククリは絶対必須のアイテムです。ヒマラヤ山中には黒熊やオオカミが出ますので。

シェルパ

  この方は案内人付きじゃないと入域を許可されないエリアに店長が入った時に雇ったガイドで、ドルチェさんと言います。日本人だとしても違和感がないモンゴロイド系の顔立ちですね。
  ヒマラヤだとソルクーンブと言われるエベレスト周辺のエリアがシェルパ族の居住地です。カトマンズではあまり見かけませんがボウダナートやスワヤンプナートといったストゥーパの近くではよく似た顔の人たちに会えます。

  ぱっと見、普通のおじさんに見えますがその身体能力は驚異的です。彼らは大人ひとりを背負った状態で単独でヒマラヤの悪路の標高差1,000m以上の下りを楽々とこなすのです。店長なら大人ひとりを背負ったら平地を1,000m進むことも難しいでしょう。
  訓練とかそういうレベルではなく遺伝子レベルで違うとしか思えません。先祖にサイヤ人でもいるんじゃないかと疑いたくなります。
  店長でさえそう思うのですから各国の医者や科学者が目を付けないわけがありません。調べてみると面白いことが分かりました、結論から先に言うと冗談抜きで本当に遺伝子レベルで違っていたのです。

  アメリカではネイチャーやサイエンスと言った学術雑誌と肩を並べる権威ある学術誌に米国科学アカデミー紀要というのがあります。そこに掲載された論文「高地に定住するシェルパ:適応の新しいパターン」によると、シェルパが高地で高い身体能力を発揮する仕組みは常人とは違う事が示されています。
  ちょっと前の店長日記でも話題にしましたが、我々常人が高地に行くといわゆる高地順化という仕組みで体が薄い空気に順応して何とか動けるようになります。高地順化は意識しなくても勝手におこなわれ、その仕組みは、酸素を運ぶ赤血球を増やしたり、呼吸回数を増やしたり、心拍数を増やしたりといったものです。
  しかしシェルパは違います。なんと、赤血球は増えていないのにもかかわらず薄い空気から酸素をたくさん取り込んでいたのです。なぜそんなことが起きるのか? 別の論文によるとペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α遺伝子というものが通常の形から変異していて、そのせいで高地に適応できているという結果が出ています。何のことやらよくは分かりませんがとにかく遺伝子が違うのです。

  戦闘民族サイヤ人ならぬ、山岳民族シェルパ人! 髪が金色に逆立ったシェルパにはまだ会ったことがありませんが、もしいたら大人10人くらいかついでエベレストに登れそうですね。


アンナプルナ街道の村 ピサン

2023年9月1日

  ネパールの国土の多くを占めるヒマラヤ山脈にアンナプルナという山があります。正確には一つの山ではなく、8,000mオーバーのアンナプルナⅠを筆頭に6,000m~7,000m級の山々が集まって山群を形成しておりまして、このアンナプルナ山群を取り巻くように存在するトレッキングルートはアンナプルナ街道と呼ばれています。

  そんなアンナプルナ街道の玄関口の街ベシサハールまで、首都カトマンズから始発のバスに乗って6時間、そこでジープに乗り換えて2,500mの標高差を一気に駆け上がること7時間、空が薄暗くなってきた頃にピサンという村に到着します。

ピサン


ピサン

  こんなジープです。後ろに日用品を積んで山奥のロッジなどに運び上げます。朝早くの便には遠くの学校に通う子供たちが便乗したりします。

  村は川を挟んで下側のローワーピサンと坂を登った上側のアッパーピサンに別れています。このアッパーピサンからのヒマラヤの眺めが実に素晴らしく、カトマンズを出発してその日のうちにたどり着ける場所としてはここが店長のイチオシなのです。

  ただヒマラヤを見るというだけなら天気が良ければカトマンズからだって見えます。ちょっと足を延ばしてナガルコットからなら更によく見えます。
  ですがピサンは違うのです、迫力が、風景の巨大さが! アッパーピサンの標高は3,300mですが、そこから標高7,939mのアンナプルナⅡの山頂までの距離がわずか10km足らずで、6,092mのピサンピークまでの距離が6kmです。地平線付近に山の頭だけが小さく見えているカトマンズ周辺とは大違いです。
  はっきりと首を上に向けなければならないくらい近いのです。しかも山群なので山は一つではありません左右に連なって見えます。これでは店長でなくても推したくなるというものでしょう。

ピサン

  うーん、こんな写真ではうまく伝わりませんね。本物はもっともっと凄いんですよ。

  さて1日でここまで来たのでその気になれば一泊して翌日にカトマンズに帰ることもできます。ですがそれではもったいない。翌日は早起きして朝焼けのアンナプルナを拝んだら、ゆっくりと村の中を散策してもらいたいです。
  ピサンは今でこそジープで行けますが、ちょっと前まではベシサハールから何日も歩かないと辿り着けないヒマラヤ奥地の古い歴史ある村だったのです。
  見所は最近になってトレッキングルート沿いにできたローワーピサンではなく、旧道沿いに昔からあったアッパーピサンの方にあります。

  泊まる宿はホテル・トゥクチェ。坂の上にあるので日当たり最高です。特にサンルームにもなっている南向きの食堂は寒い日はここから出たくなくなります。

ピサン

  住人はチベット系の人たちで顔立ちは日本人とあまり変わりません。家は石と木材を組み合わせて作られた伝統的な造りで風情があります。
  村内は斜面に沿って畑が作られていて5月には村中にアンズの花が咲きます。アンズが咲き乱れた村道をぼーっと歩いていると何だか桃源郷に来たような気分になるのは、空気が薄いせいでしょうか。

ピサン

ピサン

ピサン

  1日ゆっくりしたら翌朝に出発すればよいのです。逆ルートでその日のうちにまたカトマンズに戻ることができます。丸3日間の過ごし方としては極上の部類ではないでしょうか?
  もちろん好みがありますので万人に勧められるわけではありません。ですが山が嫌いでない人がネパールに行くのなら選択肢の一つに入れてもよろしいかと思われます。

物流復活!

2023年8月1日

 皆様、大変長らくお待たせいたしました。
 新型コロナウイルスにより日本-ネパール間の物流が途絶え、在庫も枯渇して2年間仮死状態だった当店ですが、ようやく通常営業再開のめどが立ちました。
 長いトンネルから抜け出した気分です。

 日本をはじめ世界中でコロナウイルスに対する封じ込め策が見直され、各国でコロナがある前提で経済を回す方向に舵が切られています。これはネパールも同様で、ある程度の患者の発生を許容したうえで各種規制が撤廃され、物流も元に戻ったのです

 おかげで7月末よりククリや各種ナイフの新ロットが入荷し始めております。ただし入荷しても2年ぶりとあって日本側での検品には少々時間がかかりそうです。
 なので実際にHPに商品が並ぶのは8月の半ばになろうかと思われます。
最初は商品の種類も数も少ない状態からのスタートになりますが、チェックが終わり次第当店のHPにて告知いたします。

 さて、では規制が撤廃されてネパールの街中が現在どんな状態になっているのかをご覧いただこうと思います。


再開 
 上の写真はホテルやお土産屋さんがひしめくタメル地区の通りです。ちょっと時間が早いせいかあまり人通りがありませんね。でもお店は開いているのが分かります。

再開 
 ここはカトマンズ中心部から西に数kmの所にある巨大な仏塔がそびえるボダナートです。コロナ以前と変わらぬ人出です。

再開 
 ここは当店が拠点を置く古都バクタプルのダルバール広場です。後ろの建物につっかえ棒がしてあるのは8年前の地震で被害が出た名残です。所々まだ残っているんですねぇ。
 今は雨季ですが、晴れると日差しは強烈です。

再開
 上は同じくバクタプルの人気スポットであるニャタポラ寺院前の広場です。これだけ人がいても外国人の姿がないのはやっぱり雨季のオフシーズンだからでしょうね。

 ここまでの写真でお気づきかと思いますが、マスクをしている人がほとんどいません。今では屋外でマスクをしている人がいてもその半分以上はコロナ前と同じで粉じんや排気ガス避けが主な理由のようです。

 こんな感じでネパールもすでに通常営業です。当店もぼやぼやしてはいられません。

英語教育の動機と実益

2023年7月1日

  今から数年前、新型コロナウイルスなんてまだどこにもなかった頃にヒマラヤ山中のタルケギャンという村を訪れたことがあります。ローカルバスで行けるところまで行って1泊してから更に1日歩いて辿り着く、そんな村です。
  辛うじて電気は来ていますが電波は届いていない山奥の村で驚くべき光景を目にしました。泊まった宿の子供が親のタブレットをいじって遊んでいるのかと思いきや、英語の勉強をしていたのです。
  ひとまず下の動画をご覧ください。



  推定年齢3歳くらいかと思われる子がアルファベットの発音練習をしています。途中で放り出すことも無くAからZまでしっかりやっておりました。
  やはり子供は覚えが早いのか発音は店長よりむしろ上です。

  翌日タルケギャンから更に1日歩いて山奥のメラムチガオンという村に着きました。ここで更に驚かされることになりました。
  ここで泊まった宿の子供(推定7歳)が学校の宿題をしていました。どれどれと覗いてみると、、、英語です。しかもその内容は日本なら中学1年の教科書でもおかしくないものです。
ちょっと宿題をここに書き写してみると、

Can you answer these Questions?
 1. Dina’s father has four daughters.
If the first daughter’s name is Miss One, the second daughter’s name is
Miss Two, and the third daughter’s name is Miss Three.
What is the fourth daughter’s name?

[店長訳]
あなたは質問に答えられるかな?
1.ダイナのお父さんには4人の娘がいます。
もし最初の娘の名前が1さんで二番目の娘の名前が2さん、三番目の娘の
名前が3さんなら、四番目の娘の名前は何でしょうか?

  特別な英語教室に通っているわけではありません。私立の学校でもありません。ごく普通の公立の小学校の教科書(下の写真)です。日本ならこれを7歳児にやらせるでしょうか?

英語

  こう言っては何ですが、ここはヒマラヤの山奥の村です。英語を使う機会などめったにありません。それどころかネパールは多民族国家なので、田舎では国語であるネパール語すら怪しい高齢者がたくさんいるというのに、どうしてここまで英語に力を入れるのでしょうか?

  それは英語ができることが高収入に直結しているからなのです。日本では英語ができるからというそれだけで直接高収入につながることはまずありません。なぜなら日本は日本という国の中だけで産業が十分にあって国外に出る必要が薄いからです。
  一方ネパール国内にはこれと言った産業がありません。観光業も華やかな割にはGDPに占める割合は僅かです。最大の産業である農業は生産性が低く高収入は望めません。高い収入を望むなら外国に出るのが早道なのです。

  では外国に行くとどのくらい稼げるのでしょう?
  最新の統計では外国(インドは除く)で出稼ぎしているネパール人は約35万人で、全人口の1%強です。しかしこの1%が国内最大の産業である農業に匹敵する1兆円を稼ぎ出しているのです。
  農業人口は約1900万人なので、その賃金格差は50倍以上です。これはもう畑を耕している場合ではありません。

  さて、ネパール人の出稼ぎ人口が多い順に国名を並べると、マレーシア、カタール、サウジアラビア、UAE、クウェート、、、となります。
  これらの国では無論ネパール語は通用しませんし、言葉が話せない外国人に仕事はありません。一方英語はマレーシアでは準公用語扱いですし、その他の中東諸国ではアラビア語が公用語ではありますが各国から働きに来ている人が多いせいでかなり英語も通じます。
  かくしてネパール人が外国で働くための第一の条件は英語となります。

  しかし話を聞くと出稼ぎも決して楽ではありません。体を壊す人も多く、そうなっても何の保証もありません。
  でも50倍ですよ?歯を食いしばって2~3年頑張って、あとは故郷に帰って一生楽に暮らそうという気にもなります。

  ネパールには英語を本気で学習する動機と実益がある事が分かりました。当店の現地スタッフの子供達も今では英語がペラペラで、日頃英語を使う機会もない店長の英語力など遥かに追い越されています。特にその必要もない日本人が英語力で勝てるはずがありません。
 「スタッフの子供を見返したい!」などという矮小な動機ではこれからも店長の英語が上達することは無いでしょう。でも片言であってもネパール語を憶えてネパールの商売をしている店長ですから、実は英語を学んで出稼ぎに行くネパール人と同じ地平に立っていると言えなくもありません。まあ全然稼げていませんけど…。


鉱物商

2023年6月1日

  ネパールの魅力は色々です。中でもヒマラヤの眺めとカトマンズ盆地内のネワール建築の家並みやお寺、そしてトレッキングがベストスリーと言ったところでしょうか。
  ですが、よりマイナーな楽しみも豊富にあるのです。今回紹介しますのは『鉱物』です。

  日本の各地でミネラルショーやミネラルフェアといった催しが定期的に行われている事をご存知の方も多いでしょう。そこでは宝石や鉱石や化石から隕石までも、各種鉱物が大々的に展示販売されています。
  毎年新宿で開催される東京国際ミネラルフェアには店長も何度か足を運んだことがあります(大抵は丸一日かけて歩きまわってくたくたになります)。そうやって展示物を見ていると産地表示に「インド」とか、たまに「ネパール」と書かれているものがある事に気づきます。
  そうです、
インドだけではなくその隣国であるネパールも僅かながら宝石の産地なのです。宝石の源はヒマラヤ山脈にあります。現在知られている主な産地は首都カトマンズから見てやや北側の、ヒマラヤ山脈の前縁部に沿って東西に長く伸びた断層上に点在しています。ですがその辺りは標高が4,000~6,000m級と高く、近づくことすら困難であるため、多くの未発見の産地が断層上にまだまだあるのではないかと思われます。

  さて一般人からはあまり注目されることも無いネパールの鉱物ですが、首都カトマンズのタメル地区には鉱物を扱った専門店が幾つかあります。店内に入ると下の写真のような感じです。


鉱物

鉱物

  もう少し商品の展示方法を工夫しろよ、と言いたくなりますね。ですがまぁ、ここは「宝石」以前の「原石」の状態で量りをしている店なのでこんなものなのかもしれません。

  何十種類もある原石の中から店長もサンプルとして幾つか買ってみました。下の写真をご覧ください。

鉱物

 全て重さによる量り売りで、
①ルビー(ネパール産25Rs/g)
②ラブラドライト(ネパール産9Rs/g)
③フローライト(ネパール産6Rs/g)
④ガーネット(ネパール産6Rs/g)
⑤ムーンストーン(インド産4Rs/g)
⑥アクアマリン(ネパール産15Rs/g)
⑦サーペンタイン(ネパール産7Rs/g)

  コロナ前の2017年時点の値段で1Rs(ルピー)は約1円でしたので、全部で千円もしません。日本で買うより随分とお安いです。ちなみにルビーはより色が濃い良いモノは150Rs/gでした。どれもパッと見はその辺の石ころと大差ありませんね。
  ①のルビーの産地はおそらくカトマンズの北方の中国国境に近いガネーシュ・ヒマールではないかと思われます。以前に別の店で購入して磨かせたものの写真が下になります。
鉱物
          磨く前                   磨いたもの

  磨くとただの石ころから宝石らしくはなりましたが、やはり品質があまりよろしくない為か、美しさはいま一つです。でも紫外線ライトで照らすと蛍光を発するので本物のルビーであることは間違いなさそうです。
  ネパール観光でちょっと時間が余ったら、鉱物好きの方ならこんな店を覗いてみるのもいいでしょう。磨けば光る掘り出し物が見つかるかもしれません。

ページトップへ