バネ鋼を鍛造した古代の刀剣”コラ”
ネパールの伝統的な刀剣「コラ」です。
以前「店長日記」でチラリと話題にしたことがあるこのコラ(ネパール語の発音ではクーンラに近い)という刀剣は刺突ではなく振り回すことによって鉈のように切り込む、または先端部が甲冑を貫通することを意図した刀剣です。
全長:切っ先からグリップ端まで370mm
刃長(切っ先から刃がある部分の端まで):225mm
刃厚:最大約6mm、グリップ長(木製部分):約107mm
重量:鞘あり約550g、鞘なし約450g
グリップの材質:チーク
ブレードの素材はバネ鋼です。厚みは最大で6mmなので当店の白兵戦用大型ククリなどと較べれば薄いですが、それでもごく一般的な日本刀と同等の厚みがあります。また重量では白兵戦用大型ククリを上回っています。
鞘については、ブレードの形が独特なため日本刀のように鞘から引く抜くことができません。そこで鞘は厚手の水牛の皮を縫製して3箇所でホック留めにしました。一応ベルトに通すこともできますが一動作で引き抜けないため基本的には腰につけて持ち歩くことは想定していません。
先端部の拡大画像 で、でかい...
下の写真はネパールの国立博物館の展示品です。コラには上側の展示品のように重厚で幅広なタイプと下側の展示品のようなやや細身のタイプがあり、当商品は後者のタイプです。コラは重心が極端に先端付近に偏っているため大型のものはきっと取り回しが難しかったと思います(当商品は全長370mmと小さめなので問題ありませんが)。
コラは一説には7~9世紀には既にネパールで使われていた非常に歴史のある刀剣です。しかし今日では日常生活はもとより軍隊でもお目にかかることはまずありません。お目にかかったとしても儀式用か展示品です。ククリが現在でもネパールの普通の御家庭で日用品として使われているのとは対照的です。
想像するに、理由はやはりその形状にあるのではないでしょうか。対甲冑用の刀剣としては優れていても一動作で鞘から引き抜けないため急場で遅れを取る危険があります。また御家庭でナイフとして使うには不便な形状をしています。銃器の発達で甲冑が時代遅れになった今、実用的な価値を見出すのが難しいのでしょう。
そこで当店は考えました、日本におけるコラの実用性を。当店のコラは美術品としても十分通る逸品ではありますが、ナイフは使ってナンボです。そこで店長は当店のコラを藪漕ぎのお供にお使いいただきたいと思います。
当店のメラムチも藪漕ぎを想定していますが、メラムチが藪を「払う」のに対してコラは藪を「引っ掛けてぶった切る」ことを想定しています。やや鎌に近い使い方です。払うのか、引っ掛けてぶった切るのか、どちらが良いかは藪の種類や硬さ、使用者の好みで決まります。
引っ掛けてぶった切るのがお好みの方は山歩きに行く際は是非一緒にコラをお持ちいただきたいと思います。