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バネ鋼

素敵な招待状

2020年6月1日

  ある日当店のスタッフの家に大きな封書が届きました。下の写真をご覧ください。

ブラタバンダ

  これはブラタバンダのお祝いの招待状に違いありません。一目でわかります。なぜなら日本人が見ても何のこっちゃ?という感じの右側の絵がブラタバンダであることを余す所なく物語っているからです。
  具体的には男の子である事、髪をひと房残して剃っている事、弓を持っている事、正しく七歩歩いている事です。絵だけではなくこの招待状を送った家の男の子はヒンドゥーのお坊さんを呼んで本当にこの通りの事をやります。

  で、結局ブラタバンダとは何のことかと言いますと、男の子が一人前になる通過儀礼なのです。つまり法律的にはともかく、慣習としてはこれが成人式になります。
  “ 髪を剃って七歩あるけば一人前かよ? ”などと思ってはいけません。一昔前の日本各地にはもっとバカバカしい成人の儀式がたくさんありました。米俵を一俵担げれば一人前(基準は力だけか?)とか、真夜中に危険な難所を越えられれば一人前(越えられなかった人はどうなっちゃうの?)とか….。

  封筒を開けると中には素敵な招待状が入っていました。なかなか良いデザインです。周囲は金縁で中央にガネーシュが配してあります。
  ガネーシュは象の頭を持ったヒンドゥーの神で商売の神様でもあり障害を除く神様でもあります。この場合は恐らく後者の意味合いで、成人後の人生に立ち塞がるであろう障害を取り除く為のものと思われます。

ブラタバンダ

ブラタバンダ

  中央の文章は伝統に則ってサンスクリットで書かれています。これは日本で言うならお経や祝詞のようなもので、よほど教養がある人でなければネパール人でも読めません。
  さて、実は今回のブラタバンダの主役は当店のスタッフの友人のそのまた友人の息子にあたるそうです。友人の友人レベルの遠いつながりで招待状が来るなんて日本ではまずありませんが、ネパールではこの種の催しはとにかく盛大にやることが重要であるらしく、さらに遠いつながりの店長までもスタッフの「ご家族」枠に入れてもらって当日のパーティーに連れて行ってもらいました。

ブラタバンダ

  これが会場です。夜目にも妖しい輝きを放ち大音量の音楽も聞こえています。近所迷惑を考慮してか周囲に人家はなく、郊外にポツンと建っているあたり更に怪しいものがあります。こんなところ招かれたのでなければとても入っていく勇気はありません。

ブラタバンダ

  会場の入り口から入ってすぐにある玉座のような椅子にこの日の主役である男の子がつまらなそうに座っていました。本人にしてみれば1人だけ友達から離されて御馳走もろくに食べられない訳ですから楽しいはずはありません。
  一方で会場内は豪華な食べ物がバイキング形式で食べ放題かつ飲み放題で、一角にあるステージではネパールでは結構知られた芸能人が歌とトークを披露しています。

  ちなみに日本人がカラオケが好きなようにネパール人は踊るのが好きです。小さな頃から各種行事(特に宗教行事)に踊りが組み込まれているため何のてらいも無く普通に踊ります。
  この日もステージ前では招かれた客が躍る踊る、店長も誘われましたが店長が唯一身に付けているダンスは北海盆踊りだけなので丁重に固辞しました。

ブラタバンダ

  以前の店長日記でも書きましたが普段はつましいネパール人もブラタバンダにかけるお金は半端ではありません。一昔前のいわゆる名古屋の嫁入りのように「息子3人いれば身代潰れる」レベルの費用が掛かります。
  昨今はネパールの経済成長が著しいせいもあってか、都市部では以前に比べて更に派手になりつつあると感じます。
  ただこのブラタバンダは日本の成人式とは違って“ 必ず〇〇歳にやる ”という決まりはないので男兄弟が3人いたら3人まとめて一度で済ますこともできますし現にそのケースが多いです。家がつぶれないための現実的なやり方ですね。

  一方ブラタバンダの招待客も行事を思いっきり楽しみます。ただ座って料理を食べるだけの日本の行事とは違って、招待客が楽しめるような工夫がされており、かつ積極的に参加します。
  特に招かれた子供にとってはお祭り屋台が全部タダのお祭りも同然です。きっと楽しい思い出として一生記憶に残る事でしょう。

  本当に人生にメリハリがある、楽しむことに長けた人たちです、ネパール人は。

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