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バネ鋼

南アジアの武器・武具 その6

2019年7月1日
  南アジアの武器・武具シリーズ第六弾はクファンジャル・ダガーです。
  クファンジャルは曲がった刃を持つ諸刃のナイフです。元々は中東のオマーンが発祥の地だったらしいですが、そこからペルシャを経由して東方へ広がりインド・ネパールといった南アジアでも使われるようになりました。
  下の写真はネパールの国立博物館所蔵のクファンジャルです。伝搬の過程で初めは刃がJ字型だったものがややまっすぐになったようですが、この写真のクファンジャルは特にまっすぐなタイプです。グリップはおそらく象牙製で獅子の頭が彫り込まれています。写真では分りづらいですがグリップはややすり減っており刃には使用痕がありますのでこれは実用品と思われます。

クファンジャル

  店長はインドのデリーの国立博物館でクファンジャルを実際に手に取ってみる機会がありました。下の写真がその時の物で、手と較べると大きさがよくわかります。刃渡り僅か13cm、ブレードの中央部にカリグラフィーが描かれています。刃の曲がり具合は南アジアのクファンジャルとしてはごく一般的なものです。

クファンジャル

  更に下の写真のように、グリップと鞘は金属の美しい透かし彫りになっており柄頭は山羊の頭になっているなど非常に手が込んでいるところを見ると、どうやら実用品ではなく儀礼用または美術品としてのクファンジャルのようです。

クファンジャル

  ちなみにインド海軍のミサイルコルベット艦に”クファンジャル”という名前の艦があります。この艦の記章(船を識別するマーク)はもちろんクファンジャルです。下図がその記章です。

クファンジャル

  クファンジャルと出自が似たナイフにペシュ・カブズがあります。ペシュ・カブズはもともとは中東のペルシャ周辺で発祥したナイフでしたが時代を経てパキスタン、アフガニスタン、インドやネパールといった南アジアにまで伝わりました。
  下の写真はネパールの国立博物館所蔵のペシュ・カブズです。パッと見は出刃包丁のようなナイフで、刃は上側の写真のように若干反っているものと下側の写真のように直線的なものがあります。またペシュ・カブズはフルタングで峰が異常に分厚く、先端が針のように鋭利なのが特徴です。なぜならこのナイフは地面に押さえつけた相手の甲冑や鎖帷子のわずかな隙間に針のような先端をねじ込んでそのまま全体重をかけて貫通させるためのナイフだからです。恐ろしいですね。

ペシュカブズ

  この種の伝統的なナイフは銃器が発達して甲冑が時代遅れになるにつれて廃れていくものです。クファンジャルがそのよい例で、発祥の地であるオマーンではすでに儀礼用でしか使われなくなっています。
  ペシュ・カブズもその例に漏れず一時期はほとんど使われることがなくなりました。しかし20世紀末に勃発したアフガニスタン紛争でその実用性が見直され、敵にとどめを刺す際に使われたり護身用に持ち歩かれるようになって再び現役復帰した珍しいナイフです。
  どちらも中東起源で大きさやデザインも似ているにもかかわらず地域の事情によりその運命は違ったものになりました。ひょっとしたらこのシリーズで取り上げられた他の伝統的なナイフ達も戦争や動乱がきっかけでまた息を吹き返す事があるのかもしれません。
  店長は戦争は大嫌いですが個人的にはチャクラムやブンディ・ダガーが活躍する世界を見てみたい気がします。

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