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バネ鋼

水があるのに水不足

2017年9月1日
  日本でも夏に水不足になって取水制限される事が毎年のようにどこかしらであります。梅雨もあれば台風も来るのにそれでも足りない年があるということです。
  一方店長の実家がある北海道では水不足になる事はめったにありません。北海道は梅雨もなく台風もほとんど来ないのにどうしてでしょう?
  それは北海道には雪融け水があるからです。冬の間イヤと言うほど降った雪が山に積もって初夏まで貯水池のかわりになってくれるのです。ネパールもヒマラヤ山脈があるため立地条件は北海道に近く、山には大量の雪が降り巨大な氷河が形成されています。

水不足

  上の写真はヒマラヤのナワル村から見たアンナプルナⅢ(7,555m)です。たっぷりと氷河をたたえています。この氷河から流れ下る川が下流の川に合流する地点ではこうなります。

水不足

水不足

  上側の写真は、アンナプルナから流れ込む小川が画面左右方向に流れる大きな川に合流している所です。ちょっと分かりづらいですが、なにやら茶色いガサガサした質感の物が一面に広がっています。この部分を拡大すると下側の写真になります。
  これは大量の氷雪の上に氷河に削られた岩屑と小枝や落ち葉が積もったもので、それがちょうど断熱材の役割をしているらしく6月だというのにまだ2mを超す厚みがあります。山奥の村では本格的な雨季が来るまで水が不足する心配はありません。
  実際、ネパールの一人当たりの利用可能水量は世界でも上位であり(1位は同じく山国であるカナダ)、実に全世界の淡水の2.7%が主に雪と氷の形でネパールに存在しています。ネパールの面積は全世界の陸地面積の1%にも満たず、人口に至っては0.4%しかないことを考えるとこれは凄いことです。理屈の上ではネパール人は水を使い放題であるはずなのです。
  にもかかわらず、誠に信じ難い事にネパールの首都カトマンズとその周辺地域は慢性的な水不足に悩まされています。日本では蛇口をひねれば水が出るのはあたり前ですが、カトマンズで蛇口をひねって水が出る確率はかなり低いと言わざるをえません。具体的には時期や地区によりますが、数日に一度、それもたった数時間通水されるだけなのです。それでは生活できないので住民はタンクに水を貯めて少しずつ使います。雨季の間はそれでもまだしも水は出ますが乾季になると10日に一回2時間だけなどという事になり、一度に出る水の量もせいぜい300リットルくらいになります。これでは本当に生活できません。だって日本人が1日に使う水道水の量が一人あたり平均300リットルですよ、一家族に対して10日で300リットルって、節水するにも限度があります。
 ではどうするのか?そう、こんな時には給水車を呼ぶのです。しかし給水車はタダではありません。おおむね1リットルあたり1.2円ほどで水を買うことになります。全ての水を給水車から購入して日本人のペースで使うと1日約360円かかりますので、1か月で1万円ちょっとです。
  たいした事ないと思われるでしょうか?いいえ、サラリーマンの月収が1~2万円のカトマンズですから家計に大打撃どころか撃沈します。普通の旅行者としてホテルですごす分には気付くことさえないかもしれない(せいぜいホテル代が360円余計にかかるだけ)水不足ですが、住民にとってはかくも大問題なのです。
  水資源が豊富なのになぜこんな事になっているのでしょう?原因は長く続いた内戦と政府の無策です。1996年から11年間続いた内戦で、反政府組織によって国内のインフラの多くが破壊されてしまったのです。もちろんダムや給水設備もです。
  内戦はまぁいたしかたないとしても、内戦が終結して10年経った現在でもこんな状態なのはやはり政府のせいだと思います。給水プロジェクトだってちゃんとあったのです。メラムチ川から水を引くメラムチ上水プロジェクトです。しかし当初5年で完成の予定が内戦を挟んでいるとはいえ開始から20年経っても完成しないのではお話になりません。
  ああ、もし豊富な水を活かして水力発電所を作り、安い電力とタダ同然の工業用水と低賃金の労働力を提供できればネパールは中国に続く一大工業国にだってなれるはずなのです。工業国になる事の是非は置いておくとして、実現すれば世界最貧国と言うありがたくないポジションから抜け出せるのは確実です。物質的に豊かであることイコール幸せというわけではありませんが、極端な貧困イコール不幸であることは間違いありません。
 ネパールは今月いっぱいは雨季です、無駄にカトマンズに降り続ける雨を見ていると店長は残念でなりません。

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